引当金

引当金の概要

引当金の定義

引当金(ひきあてきん、英: reserve)は、将来発生する特定の支出や損失に備えるために、貸借対照表の負債の部(または資産の部の評価勘定)に繰り入れられる金額を指します。

引当金の目的

売上債権の貸倒れ(回収不能)や賞与・退職金などの費用は、発生原因(売上の発生、勤労の提供)と金額確定(貸倒れ、賞与・退職金の支給)の時点にズレが生じます。

引当金を設定することで、収益と費用の計上時点を対応させて適正な期間損益計算を行います。

会計における引当金繰入の条件

引当金として計上されるべき条件

企業会計原則注解18により、以下の条件が引当金として計上されるべき要件とされています。
1. 将来の特定の費用または損失であること
2. 発生が当期以前の事象に起因すること
3. 高い発生可能性があること
4. 金額が合理的に見積り可能であること

法人税法における引当金

法定された引当金

日本の法人税法では、現在次の2つの引当金が法定されています。
1. 貸倒引当金(一定の法人に限る)
2. 返品調整引当金

廃止された引当金

かつて認められていたが現在廃止された引当金には、以下のものがあります。
1. 賞与引当金
2. 退職給付引当金
3. 特別修繕引当金
4. 製品保証等引当金

財務会計と法人税法の違い

法人税法に認められていない引当金でも、財務会計上は上記の4要件を満たすものは計上が強制されます。

しかし財務会計上の費用として計上することと、法人税法上の損金(経費)として認められることは別問題です。

法人税法では、引当金が損金算入を通じて課税所得を減額することから、項目によっては損金算入を否認したり、限度額を設けて算入に一定の歯止めをかけています。

 

商法・会社法における引当金

旧商法における引当金

かつて、旧商法施行規則43条において「特定の支出又は損失に備えるための引当金は、その営業年度の費用又は損失とすることを相当とする額に限り、貸借対照表の負債の部に計上することができる。」と規定されており、旧商法と旧証券取引法での引当金の範囲に差異が生じていました。

会社法における引当金

しかし、2006年に商法が全面的に改正された際に、引当金に関する規定がほとんど見られなくなりました(会社計算規則第75条・77条に一部残る)

これにより、会社法においても金融商品取引法と同様の会計処理に準拠して処理されるべきであるとされました。