金融政策

金融政策(きんゆうせいさく)」とは、中央銀行や金融当局が国内の経済状況や通貨の安定を目指して、金利調整や金融市場への資金供給などの手段を用いて行う政策のことを指します。

中央銀行が金融政策を策定する際には、経済指標(けいざいしすう)を参考にします。これらの指標には、消費者物価指数(しょうひしゃぶっかしすう, CPI)、失業率(しつぎょうりつ)、国内総生産(こくないそうせいさん, GDP)などが含まれます。

金融政策が株式市場に与える影響は大きく、金利の上昇や下降は株価や企業の業績に直接的な影響を与えます。金利が低下すると、企業の借り入れコストが低くなり、投資や雇用が促進されることが期待されます。

なお金融政策は、一般的に以下の2種類に分類されます。

量的金融政策(りょうてききんゆうせいさく)

中央銀行が市場に資金を供給することにより、金利水準や金融機関の貸出能力を調整し、経済の拡大や縮小をコントロールする政策です。

量的金融政策の一例として、オープンマーケット操作(オープンマーケットそうさ)があります。

量的金融政策の例

日本の「ゼロ金利政策」および「量的緩和政策」

1999年、日本銀行はゼロ金利政策を導入しました。これは、日本経済が長期間のデフレーション(物価の継続的な低下)に苦しんでいたことへの対応でした。この政策により、政策金利がほぼゼロ%に引き下げられ、金融機関への資金供給が増加しました。

2001年から2006年にかけて、日本銀行はさらに量的緩和政策を実施しました。これにより、市場への資金供給が大幅に拡大され、金利がさらに低下しました。この政策の目的は、金融市場に流動性を供給し、デフレーションを克服することでした。

 

アメリカの「量的緩和(QE)政策」

2008年の世界金融危機後、アメリカ連邦準備制度(FRB)は量的緩和政策を導入しました。この政策は、従来の量的金融政策を超えて、質的な要素を取り入れたものです。

具体的には、FRBは長期国債や住宅ローン担保証券(MBS)などの資産を大量に購入しました。これにより、金融市場に資金が供給され、金利が低下しました。

量的緩和政策は、金融市場の安定化と経済の回復を目的として実施されました。アメリカ経済が徐々に回復するにつれて、FRBは量的緩和政策を段階的に縮小し、2014年に終了しました。

ただし、その後もFRBは状況に応じて量的緩和政策を繰り返し実施しています。例えば、2020年の新型コロナウイルス(COVID-19)による経済危機に対処するため、FRBは再び量的緩和政策を実施しました。この時、FRBは無制限の資産購入プログラムを発表し、国債や企業向け債券、MBSなどを大量に購入することで市場の流動性を確保しました。

 

質的金融政策(しつてききんゆうせいさく)

中央銀行が金融機関の資金供給先や資産の種類を選択することにより、特定の市場や金融機関に対する資金供給を調整する政策です。

質的金融政策は、通常、経済の特定の部門や金融機関への支援を目的として実施されます。具体的には、特定の資産(例えば、企業向け債券)の買い入れや特定の金融機関への資金供給を行うことがあります。

質的金融政策の例

欧州中央銀行(ECB)の「長期債券購入プログラム」

2014年から2015年にかけて、欧州中央銀行(ECB)は長期債券購入プログラムを実施しました。

このプログラムでは、特定の国の国債や特定の銀行の債券など、一定の基準を満たす資産を選択的に購入し、質的金融政策の特徴である特定の市場や金融機関への資金供給を調整する要素が含まれています。

このプログラムはユーロ圏の債務危機に対処し、金利の上昇を抑制することで、債務危機に直面した国々(ギリシャ、アイルランド、ポルトガル、スペイン、イタリアなど)の国債利回りを安定化させることが狙いでした。

このような質的金融政策は、一般的には量的金融政策と組み合わせて実施されることが多いです。そのため、例えばアメリカの量的緩和政策(QE)においても、質的な要素が一部含まれていることがあります。

ただし、質的金融政策は、特定の資産や市場に対する資金供給を調整することで、金融システムの安定化や特定の経済部門への支援を目的として実施される点が、量的金融政策とは異なります。

まとめると、質的金融政策は、特定の市場や金融機関に対して資金を供給し、信用収縮や金融危機の緩和を図ることを目的としています。

量的金融政策と質的金融政策は、しばしば組み合わせて実施されるため、明確に区別することが難しいことがあります。