リスクリワードレシオとは?
リスクリワードレシオとは、トレードにおけるリスクとリターンの比率を示し、トレードの勝率を高めるために重要な概念で、トレードにおけるリスク(損失)とリターン(利益)の比率(レシオ)を表します。
つまり、1回のトレードでどれだけのリターンが得られるかに対して、どの程度のリスクがあるかを示します。例えば、リスクが100ドルでリターンが200ドルの場合、リスクリワードレシオは1:2となります。
ほとんどのチャートソフトにツールとしてリスクリワードレシオは装備されており、上はFXや株の分析ができるトレーディングビューのものですね。
青線のところでエントリー指値をして、赤線の直近安値を損切りの逆指値、黒線のトレンドラインで利確注文をいれるとすると、「リスクリワード比が1.2」と中央の赤いセルに表示されています。
リスクとリワードは一般的には・・
リスク: 購入時の価格から損切りまでの値幅
リワード: 購入時の価格から、利確までの値幅
で考えますので、このリスクリワード比1.2というのは、この注文が執行された場合に利確のほうが損切りよりも20%多めに設定されてるということです。
このことからリスクリワードレシオは、エントリー前に「どれだけ利益が望めるか、最大でどれだけの損失が発生するか」という比率を前もって数値化して、資産管理ををサポートしてくれる考え方と言えます。
なぜリスクリワードレシオが重要なのか
リスクリワードレシオは、トレードにおける勝率と直結するため、トレードの成否を左右する非常に重要な指標です。
例えば、勝率が50%であっても、リスクリワードレシオが1:2以上であれば、長期的には収益を上げることができます。逆に、勝率が高くてもリスクリワードレシオが低い場合、長期的には損失を拡大することになります。
また、リスクリワードレシオが高いほど、トレードにおけるリスクを最小限に抑えつつ、大きなリターンを得ることができます。このため、トレードにおけるリスクマネジメントに欠かせない指標となっています。
リスクリワードレシオの計算方法
勝ちトレードの平均値 ÷ 負けトレードの平均値
リスクリワードレシオの計算には、FXならpipsを使ったり、株なら損益を使ったりですが、比率が知りたいだけなのでどちらを使っても問題ありません。
まずは調べたい期間を決めて、その中で勝ちトレードだけをピックアップして利益かpipsの合計をだしてそれを勝ちの取引回数で割って平均を出します。
そして次に負けトレードだけをピックアップして損失かpipsの合計を出してそれを負けの取引回数で割ります。
その後、リスクリワードレシオの計算式に上記の数値を入れれば比率が出ます。
取引手法にもよりますが、たとえばスキャルピングですとだいたい0.8~2の間に集中するかと思います。3を超えてくるのはかなり握力が強い人でメンタル的にも難しく、1前後ですと初心者さんが多いですね。
そしてリスクリワードレシオが3以上ならば勝率45%あればまず負けることはありませんし、2以上なら勝率60%あれば利益は安全に増えていきます。
もし1ならば勝率は70%以上無いと危険かと思われます。
リスクリワードを無視した「勝率」は意味がない
リスクリワードの計算方法ですが、例えば「ドル円が100円の時に買い」でエントリーした場合、99円で損切り、102円で利益確定ですと、想定損失1円、想定利益2円ですので、リスクリワード比は1:2となります。
株やFXの世界では資金管理が重要と言われますが、このリスクリワードレシオはその資金管理にとても重要な役割を果たしています。
売られている手法で勝率9割!なんていう手法が売り出されていることがありますが、それらは大抵リスクリワードレシオを無視したものです。
極端な話、損切り100pips、利確1pips(リスクリワードレシオ100:1)なんて手法だったら勝率9割なんて簡単な話ですからね。
リスクリワードレシオの実例
トレードの上級者ともなると、例えば秒単位で判断を変えなければいけないスキャルピングなどの高速取引中も、リスクリワードレシオに見合わなかったら条件が良くてもエントリーを見送ります。
なぜかといいますと、トータルで考えた場合リスクリワードレシオが悪いところでエントリーすると、いくら勝率が高くても一回の損切りで大きな損失をこうむり、結局トータルでマイナスになってしまうからです。
例えば10回取引をおこない勝率70%あったとしても、「利益1:損失3」のように損大利小で利益確定を繰り返していた場合は7勝3敗でも損益はマイナスになってしまうんです。
初級者は「そんなの臨機応変に損切りを変えればいいじゃない」なんて考える人もいますが、そこも負ける理由の1つです。
上級者ほど臨機応変というあいまいな取引はせず、損切りルールなどを変えずに徹底しているんです。
それゆえにリスクリワードレシオの考え方があるかないかが投資で重要だと言われるところでございます。
利益 | 損失 |
勝ち10000円 | |
勝ち10000円 | |
負け-30000円 | |
勝ち10000円 | |
勝ち10000円 | |
負け-30000円 | |
勝ち10000円 | |
勝ち10000円 | |
負け-30000円 | |
勝ち10000円 | |
トータル70000円の利益 | トータル-90000円の損失 |
バルハラの破産確率表でリスクを計算する
さて、こちらは「リスクリワードレシオと勝率を一定にしてそのトレードをひたすら繰り返した場合に破産する確率」をまとめたバルサラの破産確率表というものです。
左側の黄色い縦の列がさきほどご説明したリスクリワードレシオ(損益率)で、上の横の列が勝率です。
例えばお使いの手法のリスクリワードレシオが1.2、勝率が60%の場合は、その両方がクロスする場所を見てみると、「1.8」なっています。
これは破産する確率が1.8%ということを表しています。かなり安全な取引方法と言えるでしょう。
しかし投資家の基本は破産確率が0%のトレードをすることが大切です。
裁量でトレードするときなどは、できればこの表で0%近くまでの手法を確率するまではデモトレードしかしないという選択肢もありだと思います。
勝率50%でリスクリワードが2でもいずれば破産する?
普通に考えますと、リスクリワードレシオ2(一回の取引が利益2か損失1の収まる)で勝率が50%ならば100%負けることはないと考えるかと思います。
しかしバルサラの破産確率表をみるとリスクリワードレシオ2で勝率50%の場合は破産確率0.9%となっています。0%ではないんですね。
これはなぜかといいますと、まず取引にはコストが加わるからです。株でしたら手数料、FXでしたらスプレッドやマイナススワップなどいろいろな要因が加わってきますのでそのあたりを加味しなければいけません。
また、単純に勝率50%ということは、3連敗する確率は12.5%もあります。5連敗する確率は3%、10連敗も0.1%の確率で残っています。
バルサラの破産確率表は長期間生き残るためにはどうすればよいのかを前提に考えて作成されていますが、当然取引歴が長くなればなるほど0.1%などのイレギュラーな事が起こる可能性が上がります。
そのため、このような厳しい数値になっています。
トレードに応用する心理的な難しさ
リスクリワードレシオの値を高く保つのは中級者を特に悩ませる問題でもあります。
理由は、リスクリワードレシオと勝率の関係は反比例しているからです。
エントリーして素早く利確すればそれだけ勝率はあがりますが、リスクリワードレシオは下がります。
もし含み益がでているのに利確せずにそのまま下がってきた時に人間は強いストレスを感じます。これに抗うのが非常に難しいので人は利益確定を急いでしまいます。これはプロスペクト理論で説明されているのですが、トレードの経験を積んで克服するしかない問題です。
投資家は利益局面と損失局面では異なる判断をしてしまうという理論です。価値の感じ方と確率の感じ方の歪みから起こります。特に重要な考え方に、
・得をする嬉しさよりも損をするガッカリのほうが大きい
・勝っていると安全な判断を、負けている時はリスクをとる判断を好む
・高い確率は低く見積もり、低い確率は高く見積もる
などといった人間の認知がプロスペクト理論で紹介されています。
リスクリワードレシオを使った実際のエントリー
それでは実際にリスクリワードレシオを固定したエントリーがどのようなものかを、チャートを使って説明していきたいと思います。
チャートの解釈も手法もたくさんありますので、これが正解というわけではないのですが参考になれば幸いです。
リスクリワードレシオが1対1の場合
こちらはリスクリワードレシオが1対1、バルサラの破産確率でいうと損益率1のトレードですね。
じわじわ上がってきたダブルトップを付けたところで戻り売りを狙うトレードです。
エントリーポイントは表に書いてあるピンクの線を下にブレイクした部分ですが、ここを基準にまず損切りの位置を決めます。通常ですとダブルトップの高値に設定するのが良いでしょう。
そしてそこから利確の最低のラインを決めます。この場合は1対1なので、緑色の枠の下限が利確ポイントとなります。
このエントリーは結果としてエントリー後に一度もマイナスもなく、一瞬上に戻しがあったものの比較的安心して持てたトレードではないでしょうか。
リスクリワードレシオが2対1の場合
こちらは先ほどのリスクリワードレシオ1対1のエントリーを2対1、つまり損益率2のトレードに変更したものです。中~上級者に人気のリスクリワードレシオ比ですね。
前回と同じく損切りの場所からリワード2の位置を設定しますとかなりギリギリの位置で利益確定がされています。
しかしこれだけギリギリですと業者によっては価格やスプレッドが違うので注文が刺さらなかった可能性も大きいです。
もしこのトレードの場合、業者価格にタッチしなかった場合は残念ながらその後の流れで損切りとなってしまったトレードです。
このように、リスクリワードレシオを良くすると勝率が悪くなるというのは実際にトレードをすると痛感するところなんです。メンタルにもかなり来ますしね。
しかしプロスペクト理論、バルサラの破産確率を理解してそのメンタルを乗り越えてはじめて投資の世界で稼げるようになるんですね。
リスクリワードレシオを意識したトレードの真髄は、単純に利確と損切りの位置を決めておくことではなく、エントリー時に利確と損切りの位置を見て、利益確定場所の手前に強い抵抗帯などがあってそこまで届きそうに無いトレードは見送る判断をおこなうことです。
決してエントリーを決めて2:1と位置を決めることではないのでご注意ください。
リスクリワード安全に最大化する方法
先程ご紹介したリスクリワードレシオを使ったトレードを実際にやってみると分かるのが、利益確定と損切りの位置を決めるのがとても難しく、実際には上手く行かないことも多いということです。
ご自身の手法のあらゆる条件が揃ったのに、リスクリワードが上手くとれそうにないとなった時にエントリーを見送ったり、予想とは違う値動きをしたりと色々な問題があります。ここがテクニカル手法の限界です。
そこでおすすめしたいのが統計的な手法である株のサヤ取りです。
一般的にはあまり話題になりませんが、FXなどのチャート分析ではリスクリワードを統計的に取り扱えませんが、株のサヤ取りならば統計的にこれ以上いかないという価格を視覚化できますので、リスクは最小限に、そしてリワードは最大限にとることができます。
これを理解するとトレードレベルがぐっと上がるのですが、本当に一部のトレーダーさんしかきちんと理解できていないのが現状です。
これから少し解説しますが、そのためにはまず正規分布について少し知識が必要ですので、正規分布を知らないという方は下記の動画を1分ほど御覧ください
通常の価格と正規分布している価格の違い
大きなリスクリワードを統計的に狙うにあたって、まず価格が「正規分布しているものを使わなければいけない」ということが重要です。
正規分布してるというのは、下記のように中央の価格がはっきりして、山なりに価格が分布しているということです。
上記の場合、ある株価が1000円を適正値として、±500円の幅で動いているということですね。500円や1500円をつけますが、かなりレアな状態で、分布の殆どが1000円に集中しているので、いずれ価格は1000円に戻ると言えます。
2σにタッチで逆張りエントリーするボリンジャーバンドなどは、このグラフを想定して作られていますね。
逆に正規分布していない価格の場合は・・・
このように価格の分布が500円ところに偏っている場合は、500円になったら中央の1000円に戻るだろうと買いを入れたところで全く戻らないことが起きます。
こちらも例えば1500円で売っても、500円で買っても1000円にはなかなか戻らないということを示しています。
つまり、統計を味方につけてトレードをするならば戻る位置がはっきりしている正規分布している価格を使うことが大切だということです。
正規分布している銘柄なんてあるんですか?
リスクリワードを狙うために、正規分布している価格を狙うということは理解できたかと思いますが、では株価やFXの価格は正規分布しているのでしょうか?
残念ながら、通貨の価値は国の相対的な強さによって決まりますし、株価も企業の成長とともに価格は上がり、戻るべき価格が存在しないため正規分布はしていません。
ではどうするのかというと、ここで株の「サヤ」を価格の代替として利用します。サヤとは「価格差」のことなのですが、下記の画像で解説していきます。
例えばA社の株価は普段800円、B社の株価は普段600円で、普段は同じような株価の動きをしています。
この場合のサヤ(価格差)は200円となり、同じような動きをするため普段はこの200円が中央値となっています。
サヤ取りではこの中央値がある銘柄を見つけてサヤが正規分布しているかどうかを確認し、エントリーしていきます。
サヤ取りのリスクリワードは圧倒的
上記はBLSシステムというサヤの正規分布を見つける分析ツールを使ったものですが、上記のようサヤの分布が正規分布しているヒストグラムがあった場合、赤丸の位置でエントリーすれば損切りは非常に浅く、利確は中央のサヤに戻ったところですれば、リスクリワードレシオをとても大きく狙うことができます。
これは上記のように正規分布しているデータでのみ可能です。
テクニカル手法のリスクリワードレシオは、チャート上に単に比率を当てる作業で、その後の価格の動きは運の要素が非常に大きくなります。
しかし統計的に狙うリスクリワードレシオは、どの価格に戻る率が高いかということを把握してリスクリワードを高めるものですので、そこは運ではなく統計的な結果となります。
そのため、正規分布を使った株のサヤ取りは非常にリスクリワードが高く、かつ勝率が高いのです。
正規分布の分析ができるBLSシステムは無料で利用できますので詳細は下記の記事からどうぞ。