
相場はランダムの中の規則でトレードする
トレードの世界にはランダムウォーク理論というものがあります。
これは「相場は不規則であり予測はできない」というもので、賛否両論ある考え方です。
「相場がランダムなら実際に勝っている人がいる事実はどう説明するんですか?」という疑問も出てきますし、最新のビックデータの解析では、「相場は完全なランダムではなく、わずかに規則を持っている」という話もあります。
とりあえずここでは、一応結論づいている「相場はほぼランダムである」という考えを前提に、なぜサヤ取りで勝てないのかを解説していきたいと思います。
相場はランダムではなくと言い切るバリバリのテクニカル派の方も知っておくと、よりテクニカルの理解が深まる内容なのでぜひ最後までお付き合いくださいね。
正規分布しているデータとは?
いきなりですが、正規分布を目で確認してみましょう。
上記の画像はあるデータの分布図ですが、データ数は中央が一番多くなり、両端へ行くほどが少なくなる山の形をしています。これが「正規分布しているデータの形」です。
代表的なものですと人間の「身長」や「体重」などが正規分布しているデータと言えます。
例えば上記が日本人男性の平均身長だとすると、中央から左右34.1%に170センチ前後の方が集中し、例えば左にいけばいくほど身長が低くて-3σ(0.1%)まで行くと身長150センチ程度、+3σまで行くと身長190センチ以上ではないかという話ができます。
これは実生活の経験から皆さんもなんとなく感覚で分かるかと思います。
他にも、雨粒の大きさや、犬や猫など動物の体重や大きさも、統計を取ってみるとこの山のような正規分布の形になります。
正規分布していないデータとは?

それでは正規分布していないデータとはどういうものでしょう。
上記の画像は正規分布していない例としてよく出される、「世帯別の収入」です。100万円ごとに区切っていますが左側に偏っていますね。
このデータを見て、「国民の平均所得は549万円6千円!」
なんて言われても、実生活を考えると、いまいちピンと来ない人が多いと思います。
それはつまり正規分布になっていないデータで平均を出されても、データが偏っているので上位、または下位のデータに引っ張られて全体の平均を動かしてしまうのです。
2000万円以上の数は少ないですが、この中には年収10億なんて人もはいってしまっていますからね。
上記のチャートで、より実勢に近い数値は平均値の549万6千円ではなく、中央値の427万円です。 参考:経済統計の基礎知識
ガルトンボードで正規分布を視覚的に見てみよう
さて、一旦難しい話は置きまして、こんどは正規分布を動画で見てみましょう。
下記の動画はガルトンボードというおもちゃの動画です。
ガルトンボードは上から大量の小さな球を流すと12段に別れた杭に当たりながら均等に下の仕切りに散らばっていきます。
球は杭に当たるたびに1/2の確率で左右に別れていき、最終的には下の溝に溜まっていきます。
これが何を意味しているかと言うと、例えば杭に当たるたびに右→右→右→右→右→右→右→右→右→右→右→右とすべて右へ転がった球は一番右側にはいり、逆に左→左→左→左→左→左→左→左→左→左→左→左と転がった球は一番左にはいります。
杭に球があたって転がる方向は1/2の確率で「左と右」に分かれますので、全て同じ方向に流れなければたどり着けない端っこは、かなりレアな現象ということになります。
そのため、中央が高く、両端が低くなるという山のような形、つまり正規分布に収まるわけですね。
正規分布を無視した一般的なサヤ取り分析
次に、一般的なサヤ取り手法のお話です。
サヤ取り分析に使われている一番ポピュラーなテクニカル指標といえば、まず下記のボリンジャーバンドがあげられます。

ボリンジャーバンドは中央の基準線(20日分の終値)から遠くへ離れるごとに、1σ(シグマ)、2σ、3σと数えていき、有名な使い方ですと2σにタッチしたら逆張りで約95%の確率で戻るというもの。
要するにさきほどの正規分布のグラフをチャートに落とし込んだものです。
これをサヤ取りに応用して、2銘柄の株価の比率(サヤ比)をグラフで表し、そこへボリンジャーバンドを当てはめて2σや3σを超えたところでエントリーすれば、統計的にいずれサヤはもとの中央値に戻るという考え方です。
ボリンジャーバンドで使うデータは正規分布をしていない
ここで少しガルトンボードの話に戻りましょう。
上から落とされた球は12段の杭にあたりランダムに落ちていき、多くの球は中央の平均値に収まり、連続で一方向に流れるようなレアな分岐をした球は、両端に流れるという事はさきほどご説明しました。
なので、サヤ比が3σを超えれば当然レアな動きなので、今後の戻りを期待してエントリーしますが・・・
皆さんお気づきでしょうか?
サヤ比って、「正規分布していない」データなのです。ついでに言えば株価も、法定通貨も、仮想通貨も、商品の価格も、我々がトレードできるモノのほとんどが、
「正規分布していない(2回目)」データなのです。
株価やドル円などの外貨は決算や金融政策によって上がり続けたり下がり続けたりと、一方向の動きをすることは当然のように起こります。
つまり、データの偏りがある、先ほどの世帯収入と同じ性質のデータです。
「一番下の世帯収入が100万円、上は2000万円、じゃあみんな年収1000万くらいに収束するんじゃないか?」と言っているようなものです。
そして一般的に広まっているボリンジャーバンドを使ったサヤ取り手法も、スバリこれと同じ事をやっています。
ヒストグラムで正規分布しているデータは見つける

BLSシステム(バフェット・ロングショート・システム)では2銘柄を比較してサヤ(2銘柄の価格差)の分散具合を過去1年~10年分も分析して、データがどのように分散しているかをヒストグラムで表すことができます(上記画像の右下)
このヒストグラムで正規分布の形をしている銘柄ペアを見つけて、ようやくボリンジャーバンドの2σ、3σのような考え方が通用するのです。
しかし実際にBLSシステムで探してみるとわかるのですが、ほとんどの銘柄ペアは下記のように正規分布を描かないことがほとんどです。
このように片側に偏っていたり・・・
全体的に価格が散ってしまっている状態が多いです
サヤ取りできちんと正規分布している銘柄ペアは、比率でいいますと全体の1割以下といったところなんです・・・・
正規分布している銘柄ペア
こちらは日経225と米国S&P500の価格差の散らばり
上記は日経225インデックスと米国S&P500インデックスの価格差の分布です。ちょっと右肩が出っ張っていますが、ほぼ正規分布の形になっていますね。
一般的な企業ペアではあまりこういう正規分布にはなりませんが、なぜこのように正規分布の形になるのかと言いますと、日本と米国との経済は密接な関係にあるからです。
例えばアメリカが潤えばアメリカへ進出している日本企業の多くが潤います。そのため、アメリカの景気が悪くなれば日本の景気も悪くなります。
アメリカと日本の関係に限って言うと、円高になれば日本の輸出企業は落ち込みアメリカの輸出企業が潤い、逆に円安になれば日本企業が潤い、アメリカの企業は落ち込みます。
いろいろな要因がありますが、このように経済を共存していると、ビルトインスタビライザー(経済の自動調整機能)が働きますので、どちらかだけが行き過ぎるといったことが起こりにくいのです。
こちらは8267イオンと7512イオン北海道
株のサヤ取りペアで正規分布しやすいペアと言いますと、上記のイオングループのように営業形態が近い企業同士などのデータが正規分布の形になりやすいです。
例えばイオン北海道の経営状況が悪くなれば、イオンから役員が飛んできてイオンで成功した事例を使ったテコ入れが始まりますし、ヒット商品などの情報データ、工場の機能などもグループ内で共有ができます。
そのため、どちらかの株価が極端に高くなり、どちらかが極端に低くなるということが起こりにくく、その結果、正規分布の形に収束していきます。
金融相場下では正規分布を絶対視してはいけない
この記事を読まれた方にはちゃんと正規分布しているデータを見つけて役に立ててほしいのですが、実は現実問題として、コロナ禍の世界中の金融緩和が原因で、正規分布している銘柄ペアが少なくなっているという現実があります。
株式相場には大きく分けで金融相場と業績相場の2種類があります。
2020~2021年は金融相場にあたるのですが、これは金融緩和でお金が余り、企業の業績とは関係の無く資金が市場に流れ込み、不景気なのに株高という現象が起こるものです。
これは一方的にお金がはいり、時に業績や統計などを無視して値段が動くことが起こります。
次に業績相場ですが、こちらは本来の相場の形です。
同セクター内の企業価値を比較して株価の価格が決まったり、決算の比較、ファンダメンタルズなど総合的に分析して投資家達が投資するものです。
【分析の疑問】期間は長期を重視?それともきれいな形の期間だけを重視?
BLSシステムでは正規分布を見つけるためのヒストグラムの検証期間を自由に変更することができます。
この際に疑問として浮かぶのが、多少形が崩れていても多くのデータが含まれている長い期間を重視するべきか、それとも期間は短くなるものの、正規分布が崩れていない中で一番長い期間を取るかです。
この答えですが、基本的にはデータが正規分布になっているという条件で、一番長い期間をとってください。
理由として、企業の利益構造は市場環境が変われば大きく変わります。
例えば富士フィルムは元々はカメラや写真関連の企業でしたが、現在では化粧品・医薬品事業に転換しています。
カメラ事業をメインに行なっていた時と、化粧品・医薬品事業を行っている現在の価格データではまったく別の企業になります。
統計というものは前提条件が同じデータの中での数値のばらつきを見るものですので、正規分布がくずれるような業態転換が起きた場合、そのデータを混ぜてはいけないということです。
BLSシステム有料プラン2週間おためしチケット

BLSシステムの無料版では日経225の分析が可能ですが、有料版では東証一部銘柄、マザース、ジャスダックなどの分析も可能になります。
有料版をお試しになりたい方は、BLSシステムメニュー画面の【設定】→【月額利用料お支払い】画面の下部に、2週間フルバージョンの無料チケットがございます。
お一人様一回のみご利用いただけますので、ひとまず無料プランを一通りお試しいただいて一通りの機能を把握してからからぜひご利用くださいませ。
正規分布でわかるボリンジャーバンドの真実【ガルトンボード】 まとめ



