インサイダー取引とは、上場会社等の関係者が、その特別な立場を利用して得た未公表の重要な内部情報を基に、その情報が公表される前に当該会社の株式等の売買を行うことを指します。
この行為は、金融商品取引法によって規制されています。
インサイダー取引の主な特徴と規制内容
- 対象者:
- 会社関係者(上場会社等の役員、従業員、取引先など)
- 情報受領者(会社関係者から重要事実を聞いた人)
- 退職後1年以内の元会社関係者
- 対象となる有価証券:
- 株券、社債、優先出資証券、新株予約権証券
- 投資法人の発行する投資証券等(J-REITを含む)
- 規制の理由:
- 投資者保護
- 金融商品市場への信頼確保
- 罰則:
- 5年以下の懲役または500万円以下の罰金(または両方)
- 重要な特徴:
- 利益の有無や金額に関わらず違反となる
- 買付時点で違反が成立し、売却しなくても違反となる
- 贈与などの無償譲渡は対象外
- 発覚の理由:
- 証券取引等監視委員会による日常的な調査と監視
- 取引所による取引の監視と分析
実際にあったインサイダー取引
日本で実際に起こったインサイダー取引の事例をいくつか紹介します。これらの事例は、インサイダー取引の深刻さと、その影響を示しています。
- オリンパス事件(2012年):
オリンパスの元会長と複数の幹部が、巨額の損失隠しに関与していた事実が発覚しました。この情報が公表される前に、一部の関係者が株式を売却していたことが判明し、インサイダー取引として摘発されました。 - 東芝不正会計事件(2015年):
東芝の不正会計問題が公表される前に、複数の役員が自社株を売却していたことが明らかになりました。これらの取引はインサイダー取引として調査の対象となりました。 - ジャパンディスプレイ事件(2020年):
ジャパンディスプレイの元社長が、業績悪化に関する未公表情報を知りながら、自社株を売却していたことが発覚しました。この行為はインサイダー取引として摘発されました。 - 日立化成買収に関する事件(2020年):
日立化成の買収に関する未公表情報を入手した証券会社の社員が、その情報を基に株式を購入し、利益を得ていたことが明らかになりました。 - ライザップグループ事件(2019年):
ライザップグループの業績下方修正に関する未公表情報を知った元社員が、その情報を友人に漏らし、友人がその情報を基に株式を売却していたことが発覚しました。
これらの事例は、インサイダー取引が様々な形で行われる可能性があることを示しています。未公表の重要情報を知った者が、その情報を利用して株式取引を行ったり、他者に情報を漏らしたりすることで、市場の公平性が損なわれる結果となっています。
まとめ
インサイダー取引は、一般投資家との公平性を損ない、証券市場の健全性を脅かす行為として厳しく規制されています。
そのため、上場会社の関係者や、重要情報を得る可能性のある人々は、特に注意が必要です。また、証券会社などでは内部者登録を実施し、インサイダー取引の未然防止に努めています。