割引債とは、額面金額よりも低い価格で発行され、満期時に額面金額で償還される債券のことです。利子は支払われず、発行価格と額面金額の差額が実質的な利回りとなります。
割引債の主な特徴
- 発行価格と償還価格の差:
- 発行時の価格 < 満期時の償還価格(額面金額)
- この差額が投資家の利益となります。
- 利子の支払いなし:
- 定期的な利払いがありません。
- 全ての利益は満期時の償還で得られます。
- 計算方法:
割引率 = (額面金額 – 発行価格) ÷ 額面金額 × 100 - 主な種類:
- 国債:短期国債(TB)、中期国債(FB)
- コマーシャルペーパー(CP)
- 割引金融債
- メリット:
- 単純な構造で理解しやすい
- 利子に関する税金の計算が不要
- キャッシュフロー管理が容易
- デメリット:
- 定期的な収入がない
- インフレリスクに弱い
- 価格変動:
- 市場金利が上昇すると価格は下落
- 市場金利が低下すると価格は上昇
- 税務上の取り扱い:
- 償還差益は原則として雑所得として課税
- 法人の場合は、有価証券の譲渡損益として扱われる
- 投資家層:
- 機関投資家や法人が主な投資家
- 個人投資家も短期の資金運用に利用
- リスク:
- 発行体の信用リスク
- 金利変動リスク
- 流動性リスク(特に満期近くになると取引が少なくなる)
割引債と一般の債券の違いは?
割引債と一般の債券にはいくつかの違いがあります。以下にその主な違いを詳しく説明します。
1. 発行価格と償還価格の違い
- 割引債:
- 額面金額よりも低い価格で発行され、満期時に額面金額で償還されます。
- 例: 額面100万円の割引債が90万円で発行され、満期時に100万円で償還される。
- 一般の債券:
- 額面金額と同じ価格、または額面金額に近い価格で発行されることが多い。
- 利子を定期的に支払うものが多い。
2. 利息の支払い
- 割引債:
- 利息の支払いはなく、発行価格と償還価格の差額が投資家の利益となります。
- 利息がないため、キャッシュフローがシンプルです。
- 一般の債券:
- 定期的に利息が支払われる(半年ごとや年ごとなど)。
- 利息支払いによるキャッシュフローが発生します。
3. 利回りの計算方法
割引債:
利回りは、発行価格と償還価格の差額を基に計算されます。
一般の債券:
利回りは、定期的な利息と償還価格を基に計算されます。
計算式:
4. 投資家の収益
- 割引債:
- 投資家の収益は、満期時の償還差益のみです。
- 例: 90万円で購入し、満期時に100万円で償還される場合、収益は10万円。
- 一般の債券:
- 投資家の収益は、定期的な利息収入と満期時の償還差益(または損失)です。
- 例: 額面100万円、年利2%の債券を100万円で購入した場合、毎年2万円の利息収入が得られます。
5. 市場価格の変動
- 割引債:
- 市場金利の変動により価格が変動しますが、利息がないため価格変動の影響がシンプルです。
- 一般の債券:
- 市場金利の変動により価格が変動し、利息の支払いがあるため価格変動の影響が複雑です。
6. 投資家の選好
- 割引債:
- 短期的な資金運用や、利息収入よりもキャピタルゲインを重視する投資家に向いています。
- 一般の債券:
- 安定した利息収入を求める投資家に向いています。
7. 税務上の取り扱い
- 割引債:
- 償還差益が雑所得として課税されることが多い。
- 一般の債券:
- 利息収入が利子所得として課税され、償還差益が譲渡所得として課税される場合があります。
割引債は、シンプルな構造と明確な利回り計算が可能な点が特徴です。ただし、定期的な収入がないため、インカムゲインを求める投資家には適さない場合があります。投資する際は、自身の投資目的やリスク許容度に合わせて検討することが重要です。