日本版スチュワードシップ・コード

日本版スチュワードシップ・コードの概要と重要性

日本版スチュワードシップ・コードは、機関投資家が投資先企業との建設的な対話を通じて、企業価値の向上や持続的成長を促すための原則を定めたものです。

2014年に金融庁によって策定され、2017年と2020年に改訂されました。このコードは、機関投資家の責任ある行動を促し、日本の資本市場や企業統治の改善を目指しています。

スチュワードシップ・コードの7つの原則

  1. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、公表すべきである。
  2. 機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、公表すべきである。
  3. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
  4. 機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
  5. 機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
  6. 機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。
  7. 機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。

スチュワードシップ・コードの特徴と効果

  • 原則主義(プリンシプルベース)アプローチ:詳細な規則ではなく、原則を示すことで柔軟な対応を可能にしています。
  • 「コンプライ・オア・エクスプレイン」(実施するか、実施しない理由を説明するか)の手法を採用しています。
  • 機関投資家と企業の対話を促進し、長期的な企業価値向上を目指しています。
  • ESG(環境・社会・ガバナンス)要素の考慮を促し、持続可能な投資を推進しています。

スチュワードシップ・コードの課題と今後の展望

スチュワードシップ・コードの導入以降、機関投資家の行動に変化が見られていますが、以下のような課題も指摘されています:

  • 形式的な対応にとどまる機関投資家の存在
  • 実効性のある対話の質と量の向上
  • 中長期的な企業価値向上への貢献度の測定と評価
  • 海外投資家への浸透と理解促進

今後は、これらの課題に対応しつつ、コーポレートガバナンス・コードとの連携を強化し、日本の資本市場の活性化と企業の持続的成長を促進することが期待されています。