アービトラージ(裁定取引)は、市場の価格差を利用して利益を得る取引手法です。
アービトラージの特徴と仕組み
- 定義:同一または類似の金融商品の価格差を利用し、割安な方を買い、割高な方を売ることで利益を得る取引方法です。
- 適用市場:株式市場、外国為替市場(FX)、コモディティ市場、暗号資産市場など、様々な金融市場で行われます。
- 種類:
- トゥルー・アービトラージ:異なる市場で同一銘柄の価格差を利用する手法。
- リスク・アービトラージ:相場の急変動時に用いられる、より難易度の高い手法。
- 暗号資産での応用:暗号資産取引所間の価格差を利用して行われます。例えば、ある取引所でビットコインを安く購入し、別の取引所で高く売却する方法があります。
- 実行方法:複数の取引所や市場に口座を開設し、価格差が生じたタイミングで迅速に売買を行います。
- リスクと特徴:
- 通常の取引よりもリスクが低いとされています。
- テクノロジーの発展により、価格差が素早く解消されるため、機会が減少傾向にあります。
- 迅速な対応が必要で、価格差が生じている時間が短いことがあります。
- 別称:「サヤ取り」「スプレッド取引」とも呼ばれます。
- 実施主体:主に機関投資家やヘッジファンドが行いますが、個人投資家も参加可能です
アービトラージの具体的な例
株式市場でのアービトラージ
同一株式の異なる市場での価格差:
ある企業の株式がニューヨーク証券取引所(NYSE)で100ドルで取引されており、同時にロンドン証券取引所(LSE)で98ポンドで取引されているとします。為替レートが1ポンド=1.30ドルの場合、ロンドンでの株価は127.4ドルに相当します。この場合、ロンドンで株を買い、ニューヨークで売ることで価格差から利益を得ることができます。
暗号資産でのアービトラージ
取引所間の価格差:
ビットコインが取引所Aで30,000ドル、取引所Bで30,500ドルで取引されているとします。この場合、取引所Aでビットコインを購入し、取引所Bで売却することで500ドルの価格差から利益を得ることができます。
外国為替市場でのアービトラージ
三角アービトラージ:
通貨ペアの間で価格差を利用する手法です。例えば、USD/JPY、EUR/USD、EUR/JPYの3つの通貨ペアがあるとします。これらの通貨ペアのレートに不整合がある場合、USDをJPYに交換し、JPYをEURに交換し、EURをUSDに戻すことで利益を得ることができます。
商品市場でのアービトラージ
先物と現物の価格差:
例えば、金の現物価格が1オンスあたり1,800ドルであり、同じ金の先物価格が1,850ドルで取引されているとします。この場合、現物の金を購入し、同時に先物契約で売却することで、50ドルの価格差から利益を得ることができます。
これらの例は、アービトラージがどのように機能するかを示しています。市場の価格差を利用してリスクを最小限に抑えつつ利益を得ることがアービトラージの基本的な考え方です。