自己資本比率とは
自己資本比率とは、貸借対照表の資産と負債の差額である自己資本(≒純資産)が総資産に対してどれくらいの割合で賄われているかを示す指標です。この数値が高ければ高いほど基盤が安定していると言えます。
画像の負債ですが、これは銀行などから借り入れしたお金などで返済義務のあるもので他人資本とも言います。もちろん利息の支払いと元本返済義務が発生します。
自己資本は株主から集めた資金や会社の利益で構成されており、自己資本とも言います。つまり返済する必要がない資産のことですが、企業は配当や株価の上昇で株主の期待に応えなければいけません。
自己資本比率の計算方法
こちらはバフェットコードで見られる自己資本比率
自己資本比率の計算方法ですが下記の計算式で表し、数値が高いほど経営が安定していると判断できます。
自己資本比率(%) = 自己資本 ÷(他人資本+自己資本)×100
※他人資本=返済義務がある資本 自己資本=返済義務がない資本
例えば自己資本が1億円、他人資本3億円の企業であれば、1億円 ÷(1億円+3億円)× 100で自己資本比率は25%ということになります。
自己資本比率とよく似た指標で負債比率というものがありまして、こちらは負債÷自己資本×100で表しますが、これは自己資本に対する負債の割合を表すもので、この割合は低いほど安定していると判断できます。
先程の会社の例で計算しますと、3億÷1億×100で負債比率は300%です。
自己資本比率の目安
自己資本比率の目安ですが一般的には40%以上あれば安全と言われています。赤字の企業の自己資本比率は-3~4%程度、黒字の企業で30%程度が平均です。
また業種によっても平均は変わってきます。下記のデータは2014年のもので少し古いですが目安としてご利用ください。
原油,天然ガス鉱業 | 71.83% | ガス業 | 43.82% |
通信業 | 62.48% | パルプ,紙,紙加工品製造業 | 43.68% |
農業 | 58.60% | 非鉄金属製造業 | 43.46% |
その他の製造業 | 57.37% | 石炭鉱業 | 40.88% |
化学工業 | 56.30% | 木材,木製品製造業 | 39.29% |
精密機械器具製造業 | 55.38% | 石油製品,石炭製品製造業 | 39.28% |
電気機械器具製造業 | 54.93% | 運輸に付帯するサービス業 | 38.26% |
一般機械器具製造業 | 53.96% | 道路運送業 | 38.19% |
その他サービス業 | 53.42% | 娯楽業 | 36.35% |
食料品製造業 | 52.63% | 証券業 | 35.76% |
映画業 | 51.46% | 林業 | 35.26% |
鉄鋼業 | 51.34% | 不動産業 | 34.25% |
金属製品製造業 | 50.92% | 水運業 | 29.30% |
繊維工業 | 49.95% | 民営鉄道業 | 26.33% |
出版,印刷,同関連産業 | 49.65% | 航空運輸業 | 25.61% |
倉庫業 | 49.30% | 旅館業 | 24.84% |
ゴム製品製造業 | 48.80% | 保険業 | 24.73% |
窯業,土石製品製造業 | 47.85% | 皮革,同製品製造業 | 24.60% |
輸送用機械器具製造業 | 46.06% | 漁業 | 22.05% |
金属鉱業 | 45.91% | 電気業 | 19.26% |
小売業 | 45.41% | 銀行,信託業 | 9.31% |
卸売業 | 44.26% | 建設業(2019年) | 30.5% |
ROEとの関係
ROEは自己資本利益率とよばれ、企業が資本をどれくらい効率よく回しているかを表す指標で、数値は高いほうが好まれます。
そしてROEの計算式は「当期純利益 ÷ 自己資本 ×100」で求められるのですが、分母である自己資本が下がるとROEは上昇します。
ですので、ROEが順調に上がっていた場合には単純に好材料として受け止めず、まず自己資本の推移を見る必要があります。もしここで借り入れなどをして自己資本が減り、ROEがあがっていただけの場合は、経営効率が上がったとは言えませんからね。
自己資本比率を高めるためには?
自己資本比率をあげる方法は、企業が利益をあげてそれを内部留保すれば当然上がるわけですが、競争にもまれ、研究費や設備投資の手を抜くことができない企業の現状としてなかなか難しいところです。
そこで自己資本比率を高めたい企業がとる手段が増資です。
増資とは企業が新規に株を発行してお金を集めることで、企業にとっては集めたお金を返す必要がないことからメリットの高い資金調達手段です。
しかし増資をすると市場に出回る株式の数が増えて(希薄化)株価が下がりやすくなるというデメリットもあります。
自己資本比率が全てではない
ここまで自己資本比率についてご説明してきましたが、自己資本比率は必ずしも高ければよいというものではありません。
自己資本比率が100%の場合(無借金)は倒産リスクはありませんが、利益率が返済の利息を上回るのならば、借金をして経営に望んだほうが利益は多く作ることができます。
そういう面から見ると、逆に自己資本比率が低いから投資対象にならないかと言うとそうでもなくなります。
ソフトバンクなどは2020年9月の時点で自己資本比率は10%を割れておりますが、通信キャリアは毎月の現金収入があるため、手元の現金が回らずに倒産という可能性は製造業などと比べると事情が異なります。
それでいて配当利回りが6%超えは魅力的な水準ですので自己資本比率で投資を躊躇するのは一考の余地がある案件なのです。