なぜ投資家は株の塩漬けをしてしまう?
こちらは塩漬けしていた人たちが復活した日経新聞の記事です
株であれFXであれ、購入した時点よりも大きく値段が下がって含み損を抱えると、どうしても損切りに勇気がいりますよね。
そしてそのままずるずると下げても持ち続け、目も当てられない状態で値段が戻るのをお祈りする日々が続きます。これを塩漬けといいます。
塩漬けは投資初心者に多いですが、暴落で一気に下がり評価損が大きくなると中級以上になってもポジションを切れずにやってしまいます。
なぜ素早く損切りができないのか?なぜずるずると長期で持ってしまうのか?
ここでは塩漬けをしてしまう理由と、処理方法などをお話していきたいと思います。
いずれ値段が戻るという希望
これは、自分なりに銘柄をちゃんと分析して購入した人が良く陥るパターンです。または、Twitterで影響力のある人がガッチガチに分析してオススメしていて、それを鵜呑みにして購入した人など。
「この下落は相場全体の流れに巻き込まれているだけで、相場が落ち着けば必ずもどる」と自信満々で塩漬けするパターンです。
こういう人は「値段が下がったら追加で買い」とナンピンをしてしまう人も多く、大変危険な考え方です。もう目線が完全に上に固定されています。
コロナ暴落で原油の価格を見ていた人なら気づいたと思うのですが、株価や通貨の価格というのは今が安いか高いかといった概念は相場にはありません。
今ついている価格が正しい価格なのです。投資の世界で高い安いは都市伝説です。
いずれ価格は戻るという概念を信じた人の末路
商品先物の話になってしまいますが、2020年4月に原油価格が大暴落しました。世界中で原油の需要が減ることを見越してのものです。
もともと長い間原油が40ドルをキープしていましたので、「コロナの暴落で20ドルまで下落した今は半額で安い!」ということで、20ドルで原油を購入した人はたくさんいました。
しかしその後、たった1日であっという間に10ドルを割り、さらに1日たたずに0.01ドル(1円)まで落ちてしまったのです。
すると先物の仕組みもわかっていない投資家が、「1円は流石に安すぎる!0円になってもいいからここで買い!」と、多くの初心者が飛びつきました。
しかしなんとその後、原油がまさかのマイナス40ドルまで落ちたんです。
上記の方は価格が1円になった時に強気で買いをいれてしまった人ですね。
もしレバレッジを20倍かけていたとするとマイナス1600万円です。
実は原油がマイナスになるというのは、ほとんどの証券会社は想定しておらず、取引停止になったところも多かったようですね。
ですので、「下がったら上がる」という希望は相場の世界では持ってはいけないんです。
投資の世界での考え方の基本は「下がったら下がるです」
配当があるから塩漬けでも大丈夫という言い訳
配当でちょこちょこと配当金がもらえることを理由にして塩漬けを肯定する方がいらっしゃいます。
実は非常に多いパターンです。特に購入時に高配当銘柄を狙って買った場合によく陥ります。
短期~中期目線で購入した後に暴落に巻き込まれたものの、「配当があるから何年か寝かせば取り戻せるキリッ」と急に長期目線に切り替えて割り切ってしまうパターンです。
たしかに配当を狙った長期投資は有効なんです。実際長く持ち続ければ持ち続けるほど一般投資家のリターンは多くなる傾向があります。
しかしこの場合の塩漬けはまったく予定外のもので、そもそも暴落があって業績が悪くなると配当を減らしたり(減配)無くしたり(無配)することもありえますからね。
計画的な配当狙い以外の塩漬けは何も良いことはありません。株価も下がってもらえる配当金も少なくなり、資金効率も落ちてしまいますからね。
失敗や損をしたくない気持ちを抑えられずに塩漬け
これは特に勝率にこだわる人が陥る罠です。
投資家ならば勝率ではなく損益にこだわらなければいけないのですが、勝率にこだわった結果損切りが遅れることは良くあります。
勝率は損切りのラインを深くするか、損切りをなくせば自然と上がります。
しかし投資家がやらなければいけないのは、勝率9割で50000円稼ぐよりも、勝率3割で100000円稼ぐことをしなければいけないんです。
つまり「損小利大」ですね。
ですので、損切りラインは予め決めておくのが投資の鉄則なんです。
塩漬けのデメリット
塩漬けすると資金効率が悪くなる
塩漬けすることの一番の問題点がこの「資金効率の悪化」です。
長期投資の方でしたらよろしいのですが、投資の世界ではほとんどのトレーダーさんが短期売買を繰り返しています。
資金が100万円あって、50万の株を評価損が-10万円なのでずっと塩漬けした場合、残り50万円の余力で戦い続けなければいけません。
もし10回取引をするならば、50万円なら500万円の資金効率。
しかし-10万円で早々に損切りをして資金90万円で10回取引できれば900万円の資金効率です。期待値がプラスの投資手法をお持ちならば取引回数は重要です。
塩漬け株は含み損だけではなく機会損失もあるということを理解しておきましょう。
株の評価損がストレスを生み出す
塩漬け株の評価損はじわじわとメンタルを削ります。
取引画面を開くといきなりそこにはマイナスの評価損が表示されるわけです。
しかも毎日。
評価損が無くなったら決済しようと考える人は多いですが、そこまでは紆余曲折があり、大きく戻す時もあれば大きく下がる時もありますが、戻しても評価損がマイナスならば何も変わりません。
また、多くの塩漬け株保持者の考えとして、「これ以下は大きく下がらない」という根拠のない考えをどこかに持っていることが多いです。
いえいえ、一度下がってなかなか価格が戻らない株はここから下も十分ありえます。
もしこれよりも下がらないと思っていた株価が更に大きく下がった時メンタルはどうなるでしょうか・・・
塩漬け株の処理の仕方
とにかく損切り
損切りができないから塩漬けなのにこんなこと言ったら元も子もないんですが、これが真理です。現在成功している投資家さん達は皆さん経験していることだと思います。
ただし、ただ損切りするのではなく、塩漬け株の場合は節税を考えての損切りも大切です。
例えば他の銘柄や配当などでその年に利益が出ている場合、損切りを行って利益と相殺し、税金がかからなくなる程度までのコントロールを行います。
塩漬けは大抵年単位の長期戦になることも多いので、その場合は何回かに分けての損切りが有効です。
ポジションを持ち直す
こちらは、株のポジションを一旦損切りして、再び同じポジションをもつという小手先テクニックです。全体のマイナスは何も変わりません。
しかし口座に表示される評価損は消えます。運が良ければ短期の戻りがあって、見た目は利益に見えるかもしれません。
「そんなの見た目だけで意味ないじゃないですか?」いや、それが結構重要なんですよ。
投資はメンタルです。評価損があると入るべきところで躊躇したり、トレード画面を開くことがおっくうになったりとマイナス面しかありません。
そこを上辺だけでも整えて少しでもメンタルに良い環境にするのは、やっても結果が変わらないならばなおさらやるべきところでしょう。
また、もし年間で利益がでているのならば、この一旦損切りで損失を確定させて年間利益を抑えて節税という事もできますよ。
塩漬けを放置しつつ口座を変える
こちらは2000年以降の月足チャート
損切はせずに評価損を抱える口座は一旦放置して別の口座に変更・・・
これは結局損切りせずにほったらかしにするので何の解決にもなっていないようで実は意外に効果があります。
もし塩漬けしている株が、安定した配当があったり、長期的なファンダメンタルズや財務状況が悪くないのであれば、損切りをしないと決め込むことで将来的にリターンが望めるかもしれません。
しかしそのリターンを邪魔するのは結局自分のメンタルなんですよね。
口座の取引画面を開くと毎日評価損を目にしますし、上がっても下がっても結果は短期間では変わりません。
ですので、いっそのことこの株をこの口座に残したまま別の口座を開いて、通常のトレードはそちらに移行してしまうのです。
臭いものには蓋をしろってことですね。
そのように評価損を見えなくすることで何が良くなるかと言うと。精神的な部分と、利が乗った後に伸ばせるということがあります。
上のチャートはここ20年のチャートですが、現在はコロナの影響で下がっていますが、今年の2月までは過去20年のどこで買っていても全てプラスになっています。
バブル時代などの非効率な経済と違って、現代の効率的な経済システムって技術が発展しているうちはやっぱり株価も上昇していくものなんです。
でも例えば3年塩漬けしていた株の評価損がようやく±0くらいになったら手放しちゃう人って多いですよね?多分毎日評価損を眺めていたらほとんどの人がプラス圏になった瞬間に手放してしまうと思います。
しかし口座を別にして見ずに放置していれば値段なんて気にならないので「株価が最高値を更新!」なんて地合いの時まで持てる可能性があがるんです。
しかも塩漬け中は配当や優待も届きますからね。握る力が弱い人はこうやってメンタルをコントロールするのもありです。
貸株サービスで金利を稼ぐ
こちらは貸株サービスという方法です。持っている現物株を証券会社に貸すことで貸株金利を受け取れるサービスです。
株を貸していてもいつでも売却可能でお手軽なところも人気です。
ただし、普通に貸株をしたままですと優待や配当金がもらえませんので、証券会社によっては配当を受け取るための手続きが必要です。
バフェットの長期投資は塩漬けが増える
塩漬け投資家の中には有名な長期投資家であるウォーレン・バフェット氏の投資手法を真似ている人が多い傾向があります。
バフェット氏は徹底的に調べた企業を割安で買って損切りせずに長期で寝かす手法をおこなっていますが、これをうわべだけ真似ると多くの場合塩漬けが発生します。意外と利益が出ていない人が多いんです。
バフェット氏の長期投資は日本株では難しい
こちらは日経225の30年期間のチャート
日本の投資家は日本国内の株を買う方が殆どで、国際的な優良株はなんとなく敬遠している方が多いかと思います。
しかし日本国内株に絞った場合、上記のチャートをみればわかりますが、米国株式のような右肩上がりのトレンドはでていないので、バフェット流の長期投資は向いていません。
ずっと右肩上がりの米国株式市場などでしたら、どこで買っても塩漬け株は現在のところ助かってます。しかし日本の株式は助からないとはいいませんが、買いどころはかなり見極めが必要です。
銘柄の選定に大切なのは「待つこと」
バフェット氏の手法は調べ上げた優良銘柄を「割安で買って長期で持つ」という手法です。
では個人投資家が市場を見渡して割安な株を見極めるにはどうしているかというと、株価やPERなど誰でも手に入れることができる情報を駆使して割安株を探します。
しかし残念ながらそのような選別方法はギャンブルです。しかも割安な株を探していると、いつの間にか企業の財務などの分析はおろそかになり、価格や割安感だけを見て低位株の方へ走る人も多く、長期投資で失敗します。
では割安で株を買うにはどうすればよいか?それは「暴落を準備して待つこと」です。
一般の投資家がバフェット氏のように株を割安で買うということは非常に難しいんです。
ですので、企業を分析しながらコロナウィルスのような、市場を焼け野原にするくらいの10年に一度の暴落を待ち続けて来たるべき時に買うんです。
一般投資家が「割安」で株を買うにはそれしかありません。
えっ?そんなに待つことなんてできない?
そうなんですよね。ほとんどの方が待てないんです。だからバフェット流投資は塩漬けが多くなってしまうんです。