ガスETFとは
ガスETF(1689)は、コモディティ投資の際のベンチマークとして広く利用されている「Bloomberg Natural Gas Subindex」の総合商品指数に連動する投資成果を目指すETF(上場投資信託)です。
証券取引所に上場しているので株取引ができる口座があればどなたでも売買が可能です。
天然ガスの基礎知識
ガスは本来は地中から噴出するガス全般を指しますが、一般的にはその中でも燃えるタイプのガス、すなわち「可燃性天然ガス」を言うことが多いです。
『地面から湧き出ている天然ガス』 出典:Wikipedia
天然ガスは近年注目を集めており、その理由は石油などほかの燃料に比べて環境への影響が少ないと言われているからです。
出典:日本ガス協会『都市ガス・天然ガスとは』
また、天然ガスは世界の広い地域から噴出しており埋蔵量も豊富なので、長期的に安定した供給が可能という点でニーズが高くなってゆく可能性があると言われています。
天然ガス相場の変動要因
モノの価格は、需要と供給のバランスによって決定されます。モノが豊富にあったり、求める人が少ない場合は価格は下落していきます。
求める人が多く、供給が追い付いていないモノに対しては「高い価格でも買いたい」という人が増えて価格が上昇します。
この需給のバランスに関して、天然ガスはどういった要因で変動するかを把握する必要があります。
生産量の増減
天然ガスの生産量が増加すると価格低下の要因に、生産量が減少すると価格上昇の原因となります。
2010年あたりからのアメリカのシェールガス革命により天然ガスの生産量が増加したことで、天然ガスの価格は年々低下傾向にあります。
シェールガス革命・・・地下約2,000メートルのシェール層に閉じ込められた天然ガスのことをシェールガスといい、2000年代後半に米国でこれを掘削する技術革新が起こったことで増産が可能となり、世界のエネルギー情勢が一変するほどの影響が出た。
また、2022年には資源国2位であるロシアの情勢悪化により、天然ガス価格の高騰がありました。
天然ガス生産量ランキング(2021年)
①アメリカ
②ロシア
③イラン
④中国
⑤カタール
【出典】グローバルノート
世界規模での需要
天然ガスは年々需要が増加しており、特に要因となるのが天然ガス消費量が多いアメリカ・ロシア・中国などの需要です。これら消費が多い国の需要の増減が天然ガス価格に大きな影響を与ます。
また、近年はアジアの新興国などでも需要が増加している傾向があり、世界規模で天然ガスの需要が増加していると言えます。
一般的には、景気が良くなると各産業などにおける需要が高まり天然ガスの価格が上がり、景気が悪くなると各産業も停滞し天然ガスの需要が下がり価格も下落する傾向があります。
別のエネルギーとの連動性
天然ガスの価格は、現在世界で最も利用されるエネルギーの原油の価格に影響を受けやすいと言われています。
原油の需要が増えると予想されると原油価格の上昇のほか、他のエネルギーの需要も増えると予想されるため、天然ガスの価格も上昇しやすくなります。
また、天然ガスと比較して太陽光・風力・石炭などほかのエネルギー資源の価格が安くなると、天然ガスの需要が減少する傾向があります。
季節性
天然ガスは欧州・ロシアなどで商業用・家庭用の暖房の燃料として使用されています。
そのため、欧州・ロシアが冬場になったら需要が高まり価格が上昇しやすい傾向があります。
その年が暖冬だった場合、需要があまり伸びずに天然ガスの価格は上昇しにくい傾向にあります。
また、この季節性を利用して冬が始まる前に買い注文を出し、価格上昇する年末年始を狙って売り注文を出す投資家も多くいます。
なぜ天然ガスETFのサヤ取りは難しいのか?
ガスの価格変動要因についてはご理解いただけたかと思いますが、それではなぜガスETFの取り引きは難しいのでしょうか?
それは実際の天然ガスの価格と、ガスETFが連動していないからです。
青:天然ガスのスポット価格 オレンジ:ガスETF(1689)
上記のチャートを見てもらえるとわかりますが、ガスETFは実際のスポット価格が上がった時に、連動してあがっていません。全体的としては平均値をとって徐々に下がっていきます。
サヤ取りは大きく値が上がったところや、突発的な値動きでのエントリーが得意ですが、残念ながらETFでは値動きが平均化されてしまうので、サヤ取りのエントリーチャンスはほぼ無くなるということになります。
また、他に似たようなETFとして原油ETF(1671)なども同様の動きをします。
そのため、サヤ取りではガス・原油ETFは取り引きが難しいのです。