FXのサヤ取りは大きく分けて2種類
FXのサヤ取りには大きく2種類あります。
一つは似たような動きをする相関性のある2通貨を両建てして、価格差が広がった時に両建てでエントリーして価格差が縮まったら決済する為替差益を狙ったサヤ取り。
もう一つは2つのFX業者のスワップポイントの差を利用してこつこつ貯めていくスワップポイントのサヤ取りです。業者間アービトラージなんて言い方もしますね。
為替差益を狙うサヤ取り
為替差益を狙うサヤ取りは、相関のある2通貨の価格差を利用して両建てでエントリーする手法です。
有名どころですと似たような通貨の動きをしている豪ドルとNZドルなどがよく使われますね。
ボラティリティの低い相場ですと決済まで時間がかかったりしますので近年では人気が下火でしたが、ずっと通用する手法ですので、廃れることはないでしょう。
AUDJPYとNZDJPYの為替差損を狙ったサヤ取り
実際にAUDJPYとNZDJPYの通貨を見てみましょう。上は日足で青色がAUDJPYでオレンジ色がNZDJPYです。
両者は似たような動きをしており、価格差は伸び縮みを繰り返しています。
為替差益を狙うFXのサヤ取りでは、似たような通貨ということで、ある程度の価格差まで広がればそれ以上は広がらないという前提でサヤ取りを行います。
ですので、この場合は過去チャートの中では価格差が一番開いている赤矢印の位置で両建てし、赤丸の価格差が縮んだ場所で両建てを決済しています。これが為替差益を狙ったサヤ取りです。
2つのFX業者を利用するスワップポイントサヤ取り
取引所 | 買いスワップ | 売りスワップ |
セントラル短資 | ¥30 | ¥-59 |
DMM | ¥15 | ¥-18 |
SBI FX | ¥40 | ¥-55 |
ヒロセ通商 | ¥10 | ¥-90 |
次に今回のメインである2つのFX業者のスワップポイントの差を利用して両建てするスワップサヤ取りのご説明です。両建てしているので暴落などに見舞われてもダメージは受けにくく、たまにスワップを確認するくらいで放置ができるというのがメリットです。
スワップというのは毎日変化するので、急な相場の変動時にマイナスになっていたりしないか注意が必要なのですが、ひとまず上は2020年3月31日のドル円の4つのFX業者の1万通貨あたりのスワップ比較です。全体を見てみると各業者ごとにスワップが違うということにお気づきだと思います。
そしてピンク色の部分を見ていただきたいのですが、買いスワップはSBIFXが一番高く、売りスワップはDMMが一番低いのがおわかりだと思います。
つまりドル円1万通貨をSBIFXでロング(買い)、同じ量をDMMでショート(売り)して両建てをすることによって、暴落時にも為替差損が発生せずに40円ー18円=22円の差額が毎日ノーリスクで手に入れられるという手法です。
スワップポイントサヤ取りは証拠金維持率に注意を
さて、スワップポイントサヤ取りですが、別々の業者を利用するためにずーっとほったらかしですともちろん利益が出ている側の口座は良いですが、利益がマイナスの口座は証拠金が心配になってきます。
大抵のFX業者の場合証拠金が50%を下回ると強制ロスカットになってしまいますからね。一応証拠金の計算方法を確認しておきますと・・・
例えば100万円を元手にサヤ取りをする場合、50万円ずつ2つの口座に分けます。そしてドル円を100円で10万通貨保有した場合は下記の計算で125%の証拠金維持率となります。
50万円(口座入金分) ÷ 40万円(※必要証拠金) ✕100 = 125%
※必要証拠金= 100円✕10万通貨✕4%
この状態で2つの口座で両建てしてスワップポイントサヤ取りを行うと、さきほどのレートの場合1日に得られるスワップは220円程度。
これ以上ポジションを持つと証拠金維持率が資金移動が間に合わないくらいの暴落時に耐えられませんのでおすすめできません。この状態でも3円幅程度の暴落でロスカットですから2019年初頭の暴落クラスが来ると耐えられませんからね。
なのでリスクの割りにリターンが合わないということで高金利通貨に流れていく方は多いです。
相関のある2つの通貨でスワップサヤ取りもありますが・・
というわけでこちらはもう少しスワップポイントを多く狙える方法です。先程は1つの通貨で2つの業者のスワップ差を利用しましたが、これは2つの相関のある通貨を2つの業者で両建てする方法です。上はちょっとマイナーな組み合わせですが、ユーロ円と、ポーランド・ズロチ円の組み合わせです。
ポーランドはEUに加盟していますが独自通貨ズロチを使用しています。しかしドイツ依存の経済体質やEUのルールに遵守して国家経営がなされているので、ユーロと相関が強いんです。
ポジションとしてはユーロ円を売り、ズロチを買いで持つのですが、この手法の良いところはユーロ円を売っても+スワップがついてたんです。
しかもズロチは結構な高金利通貨だったので両建てして売りも買いもスワップがダブルでチャリンチャリンとはいってきていましたが・・・
相関が突然変化すると利益は吹っ飛ぶ
上記は2020年3月のズロチ円とユーロ円のチャートです。
コロナ暴落でユーロ円のスワップが突然マイナスになり、ズロチのスワップも多くのFX業者で0か一桁に。しかもスワップサヤ取りの場合ロング(買い)でズロチをもっていましたが、相関もくずれてズロチがユーロに対して大幅に暴落したおかげで多くの人が損失をこうむりました。
評価損益はマイナスに、スワップも両建てでもっているだけでマイナスになってしまったので泣く泣く損切りした人が多かったみたいです。
つまり、相関のある異なった2つの通貨でのスワップサヤ取りは一見安全そうですが、やはりリスク管理の面では1つの通貨を2つの業者で両建てする手法には遠く及びません。
株ラボでは基本的に1つの通貨で2つのFX業者間の有利なスワップポイントを狙ったサヤ取りを推奨いたします。
スワップポイントサヤ取りが失敗するパターン
スプレッドを気にしないと思わぬ損失を生み出す
1つの通貨を2業者で両建てするスワップポイントサヤ取りですが、業者のスプレッドをきちんと見ておかないと、スワップポイントで痛い目を見ます。
たとえばさきほどのポーランド・ズロチはLIGHTFX(トレイダーズ証券)などですとスプレッドが3~4pipsで取引できますが、IG証券などですとスプレッドが100pips離れていたりします。
これだけ離れてしまうと入った瞬間にとんでもないマイナススタートなので、スワップで元を取りに行くのが大変ですね。
ですので、両建てする場合は、スワップの良い部分だけを見るのではなく、スプレッドも考慮に入れましょう。
スワップが変動して利益を生まなくなる
相場が大きく動いた時にスワップポイントも大きく変動します。
例えば、高金利で有名なメキシコペソですと、10万通貨あたり平時ですと100~120円ほどもあったのですが、コロナ暴落の影響で一時30円程度まで落ちています。となると組み合わせているFX業者によってはスワップがマイナスにもなったりしますので注意が必要です。
そのため、このスワップサヤ取りで長く取引しているトレーダーさん達は、スワップが長く戻らないと判断したらポジションを決済して別の通貨や業者に移動したりもしますよ。
なのでFX業者は複数用意しておくのが良いです。
そしてポジションを持ち直す時はもちろんスプレッドを意識することを忘れないようにしてくださいね。
証拠金維持率が足りなくなってロスカットになる
スワップサヤ取り手法は両建てですが、FX業者は分けて売りと買いの注文をいれるので、当然大きな値動きがあった場合は片方の口座だけロスカットに合います。
そのため、もしレバレッジを上げる場合はこまめに証拠金をチェック、大きく変動した時にすぐに追加で資金を入れられるようにしましょう。
おすすめのスワップポイントサヤ取り銘柄
南アフリカランド円 ※2020年3月2日時点のスワップ
取引所 | 買いスワップ | 売りスワップ |
セントラル短資 | ¥60 | ¥-110 |
DMM | ¥90 | ¥-100 |
SBI FX | ¥110 | ¥-120 |
LIGHT FX | ¥150 | ¥-150 |
ランド円=7.0円
上記は10万通貨あたりのスワップです。ロングはLIGHT FX、ショートはDMMで50円ほどの利益が1日に入ってきます。
どの業者もスワップがちょこちょこと動く銘柄ですが、人気の高金利通貨です。コロナウィルスで荒れている現在は買いスワップが上記の半分くらいまで落ちていますので、相場が落ち着いたらまた始めましょう。
ドル円
取引所 | 買いスワップ | 売りスワップ |
セントラル短資 | ¥35 | ¥-65 |
DMM | ¥85 | ¥-90 |
SBI FX | ¥80 | ¥-95 |
LIGHT FX | ¥70 | ¥-65 |
ドル円=110円
ドル円は流通量が多いのでスプレッドが小さく、ポジションを持ち直しやすいので根強い人気があります。またスワップもマイナー通貨に比べると動きがなだらかなので、ある日突然スワップがマイナスになっていたなんてことはめったに無い通貨です。
DMMでロング、セントラル短資かLIGHT FXでショートで1日20円ほどのスワップです。
NZドル円
取引所 | 買いスワップ | 売りスワップ |
セントラル短資 | ¥15 | ¥-39 |
DMM | ¥19 | ¥-22 |
SBI FX | ¥23 | ¥-31 |
LIGHT FX | ¥23 | ¥-23 |
NZドル円=68円
かつては高金利かつ安定銘柄だったNZドル円です。こちらは現状はおすすめではないですが、初心者が真っ先に思いつく通貨なのでご紹介しました。
現在は金利が下がってしまい旨味がなくなりましたのでスワップ取引をしている人は少ないですが、経済が安定してスワップが戻りましたら人気の組み合わせになる通貨です。
現在は上手く組み合わせてもスワップは得られないので我慢の時ですね。