「資産運用でよく聞く『複利効果』って、本当にそんなに凄いの?」
- 単利と複利の違い
- 複利で資産が増える仕組み
- 複利の計算方法と72の法則
- 複利運用で大きな損失に注意する理由
複利とは、運用で得た利益を元本へ加え、次の運用に回す方法です。
利益を引き出さずに再投資すると、元本だけでなく、それまでに得た利益も次の利益を生む土台になります。
運用期間が長くなるほど、単利との差は広がりやすくなります。
ただし、複利の試算は、一定の利回りで運用を続けられた場合の計算です。
実際の投資では利益が出る年もあれば、損失が出る年もあります。税金、手数料、運用商品の値動きも結果へ影響します。
この記事では、複利を過度に期待するのではなく、資産運用の計画を立てるための計算方法として解説します。
複利とは?利益を元本へ加えて再投資する仕組み
複利運用では、運用で得た利益を受け取らず、次の運用資金へ加えます。
たとえば、100万円を年利10%で運用すると、1年後の利益は10万円です。
その10万円を元本へ加えると、2年目は110万円を基準に運用します。
1年目:100万円 × 10% = 利益10万円
2年目:110万円 × 10% = 利益11万円
2年目は、最初の元本100万円だけでなく、1年目に得た10万円にも利益が付きます。
このように、利益が次の利益を生む仕組みが複利です。
単利と複利の違い
単利と複利の違いは、運用で得た利益を次の元本へ加えるかどうかです。
| 比較項目 | 単利 | 複利 |
|---|---|---|
| 利益の扱い | 元本へ加えない | 元本へ加えて再投資する |
| 利益を計算する基準 | 最初の元本 | 元本と再投資した利益 |
| 資産の増え方 | 一定額ずつ増える | 運用が順調なら増加額も大きくなる |
| 主な注意点 | 複利より資産の増加が緩やか | 損失が出れば再投資する元本も減る |
100万円を年利10%で10年間運用した場合
元本100万円を年利10%で運用し、税金や手数料を考慮しない条件で比較します。
単利では、毎年の利益は元本100万円に対する10万円です。
| 年数 | 単利の資産額 | 複利の資産額 |
|---|---|---|
| 1年 | 1,100,000円 | 1,100,000円 |
| 3年 | 1,300,000円 | 1,331,000円 |
| 5年 | 1,500,000円 | 1,610,510円 |
| 7年 | 1,700,000円 | 1,948,717円 |
| 10年 | 2,000,000円 | 2,593,742円 |
10年後の差は約59万円です。
複利では、運用期間が長くなるにつれて、再投資された利益の影響が大きくなります。
ただし、この表は毎年10%の利益が続くと仮定した試算です。実際の運用結果を示すものではありません。
複利の計算方法
一定の利回りで複利運用した場合の資産額は、次の式で計算できます。
将来の資産額 = 元本 ×(1+利回り)運用年数
元本100万円を年利8%で10年間運用する場合は、次の計算になります。
100万円 ×(1+0.08)10 = 約215万8,925円
利回りは、小数へ直して計算します。
- 年利3%は0.03
- 年利5%は0.05
- 年利10%は0.10
積立を加える場合は、積立時期や運用回数によって結果が変わります。
毎月初めに積み立てるのか、月末に積み立てるのか、年利を月利へ換算するのかによっても計算結果は異なります。
シミュレーションを比較するときは、次の条件が同じかを確認してください。
- 最初の元本
- 毎月または毎年の積立額
- 想定利回り
- 積立のタイミング
- 税金と手数料を含むか
複利で資産が2倍になる目安を出す72の法則
72の法則は、一定の利回りで複利運用した場合に、資産が約2倍になるまでの年数を求める簡易的な計算方法です。
資産が2倍になる年数の目安 = 72 ÷ 年利
たとえば、年利6%なら次の計算です。
72 ÷ 6 = 約12年
年利10%なら、約7.2年という結果になります。
72 ÷ 10 = 約7.2年
ただし、72の法則はあくまで概算です。
毎年同じ利回りが続くこと、利益をすべて再投資すること、税金や手数料を考慮しないことが前提になります。
「年利10%なら必ず7年で2倍になる」という意味ではありません。
利回り別に見た2倍までの年数
| 想定年利 | 72の法則による目安 |
|---|---|
| 2% | 約36年 |
| 3% | 約24年 |
| 4% | 約18年 |
| 6% | 約12年 |
| 8% | 約9年 |
| 10% | 約7.2年 |
利回りを高く設定するほど、計算上は短期間で資産が増えます。
一方で、一般に高いリターンを狙う運用ほど、価格変動や損失のリスクも大きくなります。
複利の試算では、到達年数だけでなく、その利回りを狙うためにどの程度の損失を受け入れる必要があるかも考える必要があります。
複利運用で注意したい大きな損失
複利では、利益を再投資することで資産が増えやすくなります。
一方、損失が出た場合は、次の運用に回せる元本も減ります。
特に注意したいのが、損失率と元の資産へ戻すために必要な利益率が一致しないことです。
| 資産の下落率 | 元の金額へ戻すために必要な上昇率 |
|---|---|
| 10%下落 | 約11.1%上昇 |
| 20%下落 | 25%上昇 |
| 30%下落 | 約42.9%上昇 |
| 50%下落 | 100%上昇 |
100万円が50%下落すると、資産は50万円になります。
50万円から100万円へ戻すには、50%ではなく100%の上昇が必要です。
100万円 × 50%下落 = 50万円
50万円 × 100%上昇 = 100万円
複利運用では、高い利回りを狙うことだけでなく、大きな損失を避けることも重要です。
平均利回りだけでは複利の結果を判断できない
年ごとの騰落率にばらつきがある場合、単純な平均利回りと実際の資産の増減は一致しません。
たとえば、100万円を運用し、1年目に50%上昇、2年目に50%下落したとします。
1年目:100万円 × 1.5 = 150万円
2年目:150万円 × 0.5 = 75万円
上昇率と下落率の単純平均は0%ですが、資産は100万円から75万円へ減っています。
利回りを比較するときは、単純平均だけでなく、実際に元本がどのように変化したかを見る必要があります。
複利運用の試算と実際の投資は分けて考える
複利計算では、毎年同じ利回りが続く前提を置くことがあります。
しかし、実際の株式市場では、毎年の運用成績が一定になることはほとんどありません。
- 利益が出る年と損失が出る年がある
- 運用商品によって値動きの大きさが異なる
- 売買手数料や信用取引コストが発生する
- 配当や売却益には税金がかかる場合がある
- 途中で利益を引き出せば再投資額が減る
「年利10%なら約7年で2倍」という計算は、運用目標を考える参考にはなります。
ただし、その利回りを毎年維持できることを意味するものではありません。
複利を使った資産計画では、想定利回りを一つだけ置くのではなく、複数の条件で試算すると結果を比較しやすくなります。
利回りを変えて試算する
たとえば、元本100万円を10年間運用する場合でも、想定利回りによって結果は大きく変わります。
| 想定年利 | 10年後の資産額 |
|---|---|
| 2% | 約121万9,000円 |
| 3% | 約134万4,000円 |
| 5% | 約162万9,000円 |
| 8% | 約215万9,000円 |
| 10% | 約259万4,000円 |
この試算も、税金や手数料を考慮せず、毎年同じ利回りで運用できた場合の概算です。
高い利回りだけを前提にせず、低い利回りや一時的な損失も含めて資金計画を立てる必要があります。
利益を再投資するときに確認したいこと
利益が出たからといって、必ず全額を再投資しなければならないわけではありません。
生活費、税金、緊急資金、今後使う予定のある資金まで投資へ回すと、相場が下がったときに必要な資金を確保できなくなる可能性があります。
私は利益を再投資するとき、次の項目を確認しています。
- 近いうちに使う予定のない資金か
- 生活防衛資金を別に確保できているか
- 現在の投資額が大きくなりすぎていないか
- 損失が出た場合に耐えられる金額か
- 税金や取引コストを差し引いているか
長期運用でも、利益の一部を現金として残したり、投資先の配分を調整したりする選択肢があります。
単利と複利のどちらが適しているかは、資産形成の目的とリスク許容度によって変わります。
株サヤ取りで複利を考えるときの注意点
株サヤ取りでも、利益を次の取引資金へ加えれば、計算上は複利運用になります。
ただし、サヤ取りは両建てだから損失が出ない手法ではありません。
片方の銘柄だけに決算、TOB、増資などの材料が出た場合や、過去の価格関係が崩れた場合には損失が発生します。
また、買い金利、貸株料、逆日歩などの信用取引コストも運用成績へ影響します。
- 利益が出るたびに取引額を急増させない
- 1ペアへ資金を集中させない
- 信用取引コストを差し引いて損益を見る
- 損失が続いた場合の投資上限を決める
複利効果を狙う前に、取引ルールと資金管理を固定しておくことが重要です。
株サヤ取りの仕組みや両建てのリスクは、別の記事で詳しく解説しています。
信用取引で発生する金利や貸株料などは、次の記事で確認できます。
複利運用に関するよくある質問
長期間使う予定のない資金を運用する場合は、利益を再投資することで複利効果を期待できます。ただし、生活費や近く使う資金まで再投資する必要はありません。運用目的と必要資金に合わせて決めてください。
必ず2倍になるわけではありません。72の法則は、毎年10%の利回りが続き、利益をすべて再投資できた場合の概算です。実際の運用では損失、税金、手数料などが結果へ影響します。
自動的に投資額を増やすのではなく、損失の原因と運用ルールを確認してください。想定した損失幅を超えた場合は、投資額や手法そのものを見直す必要があります。
まとめ|複利は利回りだけでなく損失も確認する
複利は、運用で得た利益を元本へ加え、次の利益を生みやすくする仕組みです。
運用期間が長く、利益を再投資できれば、単利より資産が増えやすくなります。
一方、大きな損失が出ると元本が減り、元の金額へ戻すために必要な利益率も高くなります。
- 単利と複利の違いを理解する
- 複利計算は一定利回りを前提とした試算と考える
- 72の法則を将来の保証として使わない
- 高い利回りだけでなく損失の大きさも確認する
- 税金、手数料、生活に必要な資金を考慮する


