EPS(一株当たり純利益)とPER(株価収益率)とは?
「EPS」は一株あたりの純利益を表したものです。当期純利益を発行済株式で割ったもので「収益性」がわかります。
また、過去のEPSと現在のEPSを比較することによって「成長性」も測ることができ、EPSが大きく伸びている企業は中長期で株価が上る可能性が高いです。
次に銘柄分析でよく使われる「PER」ですが、これは投資した金額がどれくらいで回収できるかの期間がわかります。
例えば、PERが10倍だった場合、もし10000円を投資したら10年で回収できるという考え方ですね。
PERとEPSの計算式
EPS(1株あたりの当期純利益) = 税引き後の純利益 ÷ 発行済株式数
PER = 現在の株価 ÷ EPS(1株あたりの(予想)当期純利益)
PERは現在の株価を1株あたりの純利益(EPS)で割っています。
つまち、「今の株価が1株あたりの純利益(EPS)の何倍なのか」を示しています。
そのため、PERは冒頭でご説明した「投資した金額がどれくらいで回収できるかの期間」の目安にされているんですね。予想値を使っているのは株価は将来を見越して値段がつくからです。
PERをもう少し詳しく
さて、PERをもう少しわかりやすく見ていきます。株価が300円の企業が2つあるとします。
そして1株あたりの純利益(EPS)がそれぞれ50円と100円だとします。
純利益(EPS)が多ければそれだけ企業は安定して、配当なども期待できますよね?同じ株価だったら、純利益が高い会社のほうが好まれます。
純利益(EPS)を使って株価からPERをだしてみると・・・
純利益(EPS)が低い左の会社のPERは6倍、純利益がたくさんでている右側の会社のPERは3倍と低くなっています。
つまり同じ株価だったら、PERが低い右の会社のほうが利益をたくさん生み出しているので、株価に対して割安ということが言えます。
PERは業種別ごとに平均値が変わる
2014年以降のTOPIX(東証株価指数)の平均PERはだいたい12倍~17倍に収まっています。
ですので、これよりも上ならば割高、下ならば割安という簡単な目安はあるのですが、業種別でみると数値にかなり偏りがあります。
業種 | 平均PER |
水産・農林業 | 12.9 |
鉱業 | 35 |
建設業 | 9.2 |
食料品 | 19.7 |
繊維製品 | 15.5 |
パルプ・紙 | 38.9 |
化学 | 13.9 |
医薬品 | 23.2 |
石油・石炭製品 | 5.5 |
ゴム製品 | 11.5 |
ガラス・土石製品 | 8.8 |
鉄鋼 | 8.9 |
非鉄金属 | 8 |
金属製品 | 10.3 |
機械 | 12.9 |
電気機器 | 19.6 |
輸送用機器 | 10 |
精密機器 | 15.7 |
その他製品 | 20.2 |
電気・ガス業 | 13.1 |
陸運業 | 17 |
海運業 | 21.8 |
空運業 | 9.1 |
倉庫・運輸関連業 | 13.5 |
情報・通信業 | 27 |
卸売業 | 11.8 |
小売業 | 21.9 |
銀行業 | 8.3 |
証券、商品先物取引業 | 8.1 |
保険業 | 13.5 |
その他金融業 | 9.7 |
不動産業 | 9.8 |
サービス業 | 22.3 |
もちろん時期によっての変動はありますが、特徴としては鉄鋼などの世界情勢に左右されやすい製造業や、同じく世界情勢に流されやすい証券や銀行などの金融業はPERが低めですね。
逆にIT関連やサービスなどの非製造業は世界情勢に左右されにくいのでPERは高くなる傾向があります。
また、株価暴落が起こったりしますとPERは真っ先に変化しますので、そんな時にこの表と照らし合わせてどのセクターが特に割安になっているか、どのセクターが割高なのかがわかります。
予想PERと実績PER
PERには、予想PERと実績PERがあり、予想PERとは今期の利益予想値を元にして算出したものです。
日本の市場や投資家はこの予想PERを重視する傾向がありますね。
そして実績PERとは、すでに確定していた前期の決算における実績EPSを使って算出されたもので、アメリカではこちらのほうが重視されています。
日本の考え方としては、株は将来を予想して買うものという考え方が強いので、日本でPERと言った場合は通常「予想PER」が用いられます。
PERを使うときの注意
PERは利益の変動が激しい企業の場合は数値が短期間で大きくぶれます。1年で50倍くらいの誤差は平気で起こります。
また、利益が少ない場合は当然分母であるEPSの値が小さくなりますのでPERの値が大きくなり参考にならなくなります。もちろん赤字の場合はPERの計算はできません。
ですので業績が黒字で安定している企業でないとPERによる適切な評価は難しいといえます。
株価が急激に下がっている時のPERに注意
PERの計算式をもう一度おさらいします。
PER = 現在の株価 ÷ EPS(1株あたりの(予想)当期純利益)
上記のPERの計算式ですが、注意してほしいのはEPSは「予想」の値を使うということです。
実はこの1株あたりの予想当期純利益は企業側が発表しますが、修正も企業側で行われます。逆に言えば企業で修正しない限りは変動しません。
しかし現在の株価は毎日変動しますね?
つまり株価が急激に下がった場合は株価が計算式に含まれていますのでPERももちろん下がりますが、ここでEPSの数値は修正されない限り下がらないので、PERの値が一時的に安くなりすぎてしまうということがあります。
株価が急激に下がった場合は、今後修正されるであろうEPSの値も下がる可能性が高いです。
ですので、急激な株価変動時はPERを使うのは避けたほうが無難なのです。
EPSが変化すればPERも変化する
自社株買いで発行済み株式数が減るとEPSが上がる
自社株買いとは、世の中に出回っている株式を発行元の会社が買い戻して消却することです。
これを行いますと発行済株式が減りますので、一株あたりの利益や資産価値が上がりますので市場には歓迎されやすいですね。株主還元の一環として行われる場合が多いです。
そして自社株買いの場合はEPSは上がった分、PERも低くなります。
株式併合によって発行済み株式数が減るとEPSが上がる
株式併合は既に発行されている株式同士をくっつけてしまう事を指します。例えば2株を1株に、10株を1株といったようにまとめます。
ただし2株を1株にした場合は価格も2倍になり、10株を1株にすれば株価は10倍として修正されますのでトータルの価値自体は変わりません。なぜ企業はこんなことをするのかというと、例えば株価が50円まで下がってしまった場合、低位株として扱われて企業イメージが悪くなりますよね?
そんなときこの株式併合で「10株→1株」にして株価を10倍にしてしまえば500円となり、見せかけの株価を演出できるんです。
それにともない一株あたりのEPSも上昇することになります。ただし株式併合の場合は株価も修正されますのでPERには直接影響がありません。
ただし株式併合後のEPSを参考にするのはちょっと怖いことがわかりますね。
純利益が増加するとEPSは上がる
純利益(EPS)は経営が改善されればもちろん上昇します。この上昇は株主ならば歓迎すべきものですね。
また、経営状態が変わらなくても、銀行から借り入れしていた設備投資等の返済が終わった場合などでも純利益は増大します。
そして企業の純利益が増加した場合はPERは低下します。