現在の金融緩和は過去最大
2021年1月の株式市場全体の評価額ですが、実体経済のほぼ倍の評価に達するという過去に例のない領域に突入しています。
レストランや商店は潰れているのに株価は上がり続けている異常さはみなさんも疑問を持っているかと思います。これは市場参加者も当然同じ疑問を持って取引しています。
しかし現在、世界中で紙幣が市場に流されており、この莫大な紙幣の供給は当然将来的にはインフレを呼びおこします。現金を手元に置いておけばその価値は下がる一方ですので、ノルマのある機関投資家は当然無理矢理にでも株や債券、商品に変えて手元に持っておくのがセオリーです。
市場参加者が全員今の価格は異常だとはわかっていても、現金で手元に持っておけば損をするのが確定なわけですので、それならばたとえ今がバブルかもしれないけれども、リスクとリターンを天秤にかけて株を買い進んでいるわけです。
こんなチャートの銘柄でサヤ取りをおこなってはいけない!
さて、金余りの状態での株銘柄の選別方法ですが、通常のBLSシステムからだけで判別するのでなく、決算内容とチャートを見たほうが安全です。
サヤ取り2銘柄を比較した時に決算内容を無視した動きをしている銘柄は、企業が評価されていると言うよりも、大口が取引しやすい売買高が常に確保されているからという理由だったり、別の取引とのヘッジ先だったりします。
例えば下記は東急電鉄と小田急電鉄の決算内容です。
9005東急電鉄と9007小田急電鉄の決算内容
こちらは両社ともに鉄道株です。企業規模も近く、売上高の推移もほぼ同じ動きをしていますので、会社の財務構造もほぼ同じものだという事がわかります。
右側の修正一株益を見ると投資家にとっては東急のほうが少し魅力的にうつる比較対象ではありますね。
しかし現在、小田急電鉄の株に大口の資金が流入している状態が続いており、ローソク足チャートを比較してみますと・・・
小田急&東急のローソク足チャート
こちらが9007小田急電鉄の週足。コロナ禍でもぐんぐん上がっています
9005東急電鉄はコロナ禍でぐんぐん下がっています
コロナで人や物の動きが鈍っている現状、鉄道株というのは非常に苦しい状況にあるはずなのですが、なぜか週足のローソク足を見比べますと小田急は上がり、東急は下がっています。ほぼ同じ利益構造の2社なのにです。
このような2社を比較した時に、特にニュースが無いのに週足で同業種の片方だけに大陽線が連続で出ている時は、金融緩和下では大口の資金の逃避先になっていると考えたほうがよく、安易にサヤ取りで手を出すべきではありません。
こういった銘柄は企業が評価されているわけではないので、相関などを無視してお金が入り続けます。
同じ様な例を他にもだしてみますと・・
同業他社に比べて週足が急激に伸びているチャート
3433トーカロの週足チャート
溶射加工最大手のトーカロですが、同業他社がレンジを作っているのに対し、異常な値上がりを見せています。ニュースがないのにこの上げは平時ではなかなか起こりません。金融緩和下ならではの上げ方です。
続いてこちらは6963ロームの週足チャート
半導体や抵抗器大手のロームですが、同業の三菱電機や東芝に比べて一つ飛び出た上げを見せています。
上記のように同業他社と比べて、特にニュースがでていないのに、週足で大陽線が連続で出ています。
この場合は相関を無視してサヤが広がり続ける場合がありますので、サヤ取りを行う場合は損切りを設定して慎重に取引を行って下さい。
【分析の疑問】期間は長期を重視?それともきれいな形の期間だけを重視?
BLSシステムの有料プランの場合、散布図やヒストグラムの検証期間を自由に変更することができます。
この際に疑問として浮かぶのが、多少形が崩れていても多くのデータが含まれている長い期間を重視するべきか、それとも期間は短くなるもののチャートの相関が崩れていない中で一番長い期間を取るかです。
この答えですが基本的には、散布図の形がきれいな中で一番長い期間をとってください。
理由として、企業の利益構造は市場環境が変われば大きく変わります。例えばコロナ前とコロナ後では、航空系やホテル業を営んでいた会社の株価はまったく状況が変わりました。
統計というものは前提条件が同じデータの中での数値のばらつきを見るものです。
コロナのように大きく前提条件が変わった前後のデータを一緒にして分析しても意味がありません。ですので、散布図の形が乱れた場合は期間を短くして形のきれいな期間のみで分析してください。
コロナ前の2019年は東京オリンピック需要があるということで、ホテル業界や航空業界が盛り上がりそこへ飛びつく投資家も多くいました。それが2020年以降はホテル・航空業界の株は見込みがなく、そちらへお金を使うならば薬品・保険業界などへお金を回そうという流れが起きました。これで市場参加者がガラリと変わってしまったんですね。
こうなると散布図の形が大きく変わりますが、その場合は最低半年は放置して「新しい相関関係が作られる」のを待つのが最善です。市場は合理的ですので、市場環境が変わったらその中でまた企業間の比較が始まり、相関している企業同士ならば必ず綺麗な散布図が作られていきます。
金融緩和下でのサヤ取り銘柄を選ぶ注意事項