東証一部・二部の「東証」とは?
日本には東京、名古屋、福岡、札幌の4箇所に証券取引所があり、その中でも一番有名な証券取引所は「東証」と呼ばれる東京証券取引所です。
日本で一番取引高が多い東証には多くの企業が上場しており、実際に個人で株の取引を行う場合も東証に上場している企業が中心になるかと思います。
証券取引所の役割としては、株、金やトウモコロシなどの商品先物、企業がお金を借りる時に利用する債権などの売買ができる場所を提供しつつ、それらの取引に不正が無いかの監視や、企業の上場の審査、投資家と直接やり取りすることになる証券会社などの調査など、業務内容は多岐にわたります。
世界三大証券取引所と言えば、東京証券取引所、ロンドン証券取引所、ニューヨーク証券取引所ですが、最近は中国と香港証券取引所の躍進が目立ち、時価総額1位のニューヨークは揺るがないものの、日本・ロンドン証券取引所の地位はゆるぎつつあります。
東証には4つの区分
東証には3600を超える企業が上場しており、会社の規模によって「東証一部」と「東証二部」「マザーズ」「JASDAQ」の4つに分けています。
分けているのは投資家向けにわかりやすく分類するという意味もありますが、上場基準を複数用意することで、より多くの企業が上場できるようにという狙いもあります。
・東京証券取引所:3,618社 ←圧倒的に多いです
・名古屋証券取引所:75社
・福岡証券取引所:28社
・札幌証券取引所:16社
東証に上場するメリット
東証一部上場、とは良く聞きますが、なぜ東証なのか?名古屋や福岡じゃだめなんですか?
これは企業にとって何のメリットがあるかと言いますと、やはり東証ブランドです。知名度が地方の証券取引所とは圧倒的に違いまして日本で一番大きい東京証券取引所に上場ともなると世界中の投資家の目に触れますから世界の投資を呼び込むことができます。
これが東証以外の地方の証券取引所だと大きな投資マネーの流入は期待できません。何百億という額が期待できる東証上場こそが、未上場の企業の目標であるといえます。
しかし地方の証券取引所にもメリットはあります。それは「上場の審査基準が緩い」ということです。
名古屋の新興企業向け市場であるセントレックスなどは時価総額が3億円程度(マザーズは10億円必要)で上場できますので、中小企業でも上場して株式を公開できる可能性があります。
RIZAPやニトリなどの企業も元々は地方の証券取引所からの東証へ上場ですので、ステップアップとして地方証券取引所は利用されています。
東証一部 > 東証二部 > JASDAQ ≧ マザーズ
東証一部の特徴
東証一部には日本を代表する企業が名を連ねています。
ソニー、ソフトバンク、ユニクロのファーストリテイリングなど規模の大きい企業は東証一部です。
上場基準が厳しいので社会的信用は高く、倒産リスクも少ないので海外の投資家も基本的には東証一部を見ます。
上場企業数は2166社(2020年6月)で、日経225の採用銘柄はこの一部上場企業から選ばれます。
東証第一部上場基準
・時価総額が250億円以上
・流通株式が2万単位以上+株式全体の35%以上であること
・株主数2200人以上
・直近2年の利益が5億円以上、もしくは時価総額が500億円以上
・取締役会があり、継続事業年数が3年以上
・監査法人による会計監査を2年以上
・虚偽記載や不正がないこと
マザーズ経由での東証一部上場
実は東証一部に上場する際に、新興企業向け市場であるマザーズから移動する場合には特別に条件が緩和されます。
株主数や監査などの基本的な要項は同じなのですが、時価総額は東証一部に直接上場する場合は250億必要なのに対し、マザーズから移動の場合は40億円ですみます。(JASDAQからは通常通り250億円必要)
現在東証一部企業であるサイバーエージェントなどはマザーズからこの方法で東証一部に格上げになりました。
しかし「日本最高の株式市場」である東証一部にしては小さな会社が増えすぎて東証ブランドが低下しているということで、近々この要項は改変される予定です。
意外にも東証一部ではない企業
日本人なら誰でも知っているような有名企業でも、東証一部どころか新興市場にも上場しない巨大企業はたくさんあります。
例えばサントリーは創始者一族の権限が強いのと、経営に株主の意見がはいるのを嫌うことから上場しないと言われています。
また、ロッテや小学館、ダイソーや富士ゼロックスなどの巨大企業も上場していません。
上場することによって自由な経営ができなくなること、敵対的買収の恐れがでること、財務状況の公開義務が発生する事などが理由として考えられます。
ちなみに日本を代表する大企業「東芝」ですが、現在はエリート企業が集まる東証一部ではなく、一部よりも規模の小さい企業が上場する東証二部に上場しています。
この理由として東芝は、2015年に利益を水増しする不正会計が発覚しました。
さらにアメリカの原発子会社で巨額損失が発覚して債務超過に陥ったため2017年に東証二部に降格したのです。
東証二部の特徴
さて続いては東証二部のお話です。2020年7月時点で481社が上場しています。
東証二部は東証一部に比べて若干審査が緩められており、企業によっては東証一部へのステップアップとして考えているようです。
同じ東証内の市場ですが、二部はやはり一部に比べて売買代金は少なく、1銘柄あたりの取引量は1~2割ほどしかありません。
しかし逆に売買高が少ないために材料が出た時に大きく株価が動きます。そのため短期売買に向いている市場です。
ちなみに上場基準が東証第一部の次に厳しい割には、投資家にはあまり人気のない市場でもあります。理由としては地味な会社が多く、マザーズのように昇格を前提とした上場維持の期限がありません。
また、マザーズやJASDAQのほうが審査期間や基準が短くて緩いために、信用のある東証二部よりも新興市場に好んで上場する企業が多く、市場に歪みが発生しています。
そのため東証は市場を再編して、今後3つの市場に分けることを計画しているようです。
東証第二部上場条件
大まかには上場一部の要件と同じですが、下記の部分が東証第一部よりも緩和されています。
・株主数800人以上
・流通株式数4000単位以上+株式全体の30%以上
・時価総額20億円以上
マザーズ、JASDAQ市場
これまでちらほらと名前が出ていたマザーズとJASDAQ市場についても簡単にご紹介しておきましょう。
マザーズ
マザーズは新興企業向けの市場でして、基準はゆるく審査期間も東証第一部にくらべて1/3程度と短いです。2018年にメルカリがマザーズに上場してニュースになりましたね。
2020年6月時点では322社が上場しています。
名目としては高成長する企業を上場させる市場となっており、赤字決算の企業でも上場ができています。
そのかわりの担保として一部や二部よりも経営の透明性と情報公開は厳しく、業績の開示や年2回以上の会社説明会が義務付けられています。
・株主数200人以上(上場時見込み)
・時価総額10億円以上(上場時見込み)
・流通株式数2000単位以上
・流通株式時価総額5億円以上
・流通株式数が全体の25%以上
JASDAQ
アメリカにNASDAQ(ナスダック)という、もともとベンチャー企業向けに作られた新興市場がありますが、それをならってJASDAQ(ジャスダック)と名付けられた新興企業向けの市場です。
歴史は意外にも古く、1963年からすでにその形はあったため、老舗の企業も上場しています。
JASDAQはスタンダードとグロースの2つの市場に分かれており、2020年6月でスタンダード市場には664社、グロース市場には37社が上場しています。
違いとしてはスタンダード市場のほうが上場基準が厳しく、グロースは赤字でもその他の要項を満たしているのならば上場できる市場です。
・株主数200人以上(上場時見込み)
・時価総額5億円以上(上場時見込み)
・直前事業年度に利益が1億円以上または時価総額50億円以上
・監査報告書や有価証券報告書等のチェック
・監査法人の監査を受けている
など
※グロース市場の場合は、利益に関しての項目が必要ありません。
サヤ取りには東証一部の二部どちらがおすすめ?
当サイトでおすすめしている非常に勝率の高い株のサヤ取りは、似たような動きをする2つの銘柄をそれぞれ売りと買いでエントリーして、その価格差の動きを狙うものですが、東証一部と二部銘柄どちらがおすすめかといいますと、圧倒的に東証一部銘柄です。
株のサヤ取りに重要な値動きは突発的なものではなく、企業の本来持っている実力が過大、または過小評価された時に起こる価格の乖離を狙うものです。
東証一部銘柄の場合、世界中の投資家が企業の決算を考慮して株の売買をしますので、多少の上下はあれど、最終的には合理的な価格にたどり着きます。
しかし東証二部銘柄の場合は世界中の投資家が注目するわけではありません。また取引量も少ないために一部の大口の思惑で株価が動いてしまいます。
株のサヤ取りは似たような2銘柄が最終的には企業の実力に見合った合理的な価格に落ち着くことを前提とした手法ですので、取引量が少ない=非合理的な価格になる、という意味で東証二部銘柄はおすすめしないのです。