株価純資産倍率 PBRとは?
株価純資産倍率PBRはPERと同じく単位に「倍」を使って表示されます。
これは何に対して倍という単位を使っているかと言いますと企業の純資産です。
株主が有する権利の1つに「残余財産分配請求権」というものがあるのですが、これは企業が倒産(解散)した時に残った残余財産(純資産)を株主で分けることができるという権利です。
PBRにはこの残余財産が関係しており、PBRが1倍を割ると株価が割安と言われますがその理由を次で見ていきましょう。
PBRの計算方法
PBRは1株あたりの残余財産(純資産)の何倍の水準にあるかを表します。計算式は以下のとおりです。
※BPSの計算式は純資産÷発行済み株式数
PBRが1倍を割ると割安と判断される理由ですが、上記の1株あたり純資産(BPS)は企業が解散した時に株主に分配される1株あたりの金額のことです。
つまりPBRが1倍を割るということは、「現在の株価よりも企業が解散した時に株主が受け取れる金額のほうが高い」ということを表しています。
そのため、PBR1倍を割っている企業は割安と言われるのです。
PBRが高い業種・低い業種
一般的にPBRが2倍以上で割高、1倍が適切、1倍以下で割安と判断されますが、当然純資産(土地・工場・特許など)など業種が変われば純資産の内容も変わってきます。
そこで各業種別のPBRを表にしてみました。
1 水産/農林業 | 1.0 | 18 精密機器 | 1.5 |
2 鉱業 | 0.3 | 19 その他製品 | 1.4 |
3 建設業 | 0.8 | 20 電気/ガス業 | 0.8 |
4 食料品 | 1.3 | 21 陸運業 | 1.1 |
5 繊維製品 | 0.7 | 22 海運業 | 0.5 |
6 パルプ/紙 | 0.6 | 23 空運業 | 0.8 |
7 化学 | 1.2 | 24 倉庫/運輸関連 | 0.8 |
8 医薬品 | 1.7 | 25 情報/通信業 | 2.8 |
9 石油・石炭製品 | 0.6 | 26 卸売業 | 0.9 |
10 ゴム製品 | 0.8 | 27 小売業 | 1.8 |
11 ガラス/土石製品 | 0.8 | 28 銀行業 | 0.3 |
12 鉄鋼 | 0.4 | 29 証券/商品先物取引業 | 0.7 |
13 非鉄金属 | 0.7 | 30 保険業 | 1.0 |
14 金属製品 | 0.6 | 31 その他金融業 | 0.8 |
15 機械 | 1.2 | 32 不動産業 | 1.0 |
16 電気機器 | 1.4 | 33 サービス業 | 2.1 |
17 輸送用機器 | 0.7 | 総合 | 0.6 |
鉄鋼業や鉱業よりも設備などにお金がかかっていない銀行業のPBRが低い理由として、ROE(自己資本利益率)がとても低く効率の悪い経営をしているということがあげられます。
扱っている商品は代わり映えが無く(規制もあり変えにくい)利益が急に伸びるということがありませんからね。
また、もし解散となった時に残る純資産ですが、銀行業の特徴として有価証券等が自然と多くなります。
しかし銀行が解散する状況というのはおそらく取引先も解散または経営も悪化している状態であり、つまり解散時点で銀行の保有資産はかなり毀損していることが予想されるので「残余財産分配請求権」で回収できる純資産が期待できないことが理由としてあげられます。
PBRは役に立たない?
PBRが企業解散時の純資産を目安にしているというお話はしてきました。
しかしこの純資産の算出に関して疑問をもつ投資家が多く、「PBRは使えない」という声も上がっています。この理由をご説明していきますね。
PBRは正確な解散価値を反映できていない?
PBRで問題とされているのは企業解散時に残る残余財産、つまり純資産の算出方法です。
資産価値というのは財務諸表などから算出されるものですが、ここで考えなければいけないのは、資産価値と売却価格は異なるということです。
企業の解散時には純資産を売却して現金に変えて株主に分配されるわけですが、財務諸表から算出した見積もりの金額で純資産が売却できるものではありません。
たとえば10億円で作ったネジ工場を売りにだしたところで、誰が10億円で購入してくれるでしょうか?
現実はよほどのコネか運がなければ希望価格での売却は難しいわけで、売却価格は事前の見積もりよりも低くなることは間違いないです。
もちろん純資産が現金や土地、有価証券が残っているならば価値が落ちないですが、解散時点でそれらが多く残っているとは考えにくいわけです。
PBRは投資家の心理を反映していない
企業解散時に投資家へ分配される残余財産(純資産)は現金へ変える際に見積もりよりもだいぶ低くなることはわかりました。
次に問題となるのは投資家の心理です。PBRは企業の解散時の純資産をベースに考えられていますが、株主というのはそもそも企業の資産価値を前提に投資はしません。
解散時に売却すれば高額で売れる素晴らしい特許をどれだけ持っているかというよりも、その特許でどれだけの利益をだせるかということに興味を持つのが投資家ですし、実際に株が買われるのも解散時の価値ではなく将来の利益を見越してのことです。
そういった視点で見るとPBRを株価分析にそのまま使うのは躊躇してしまうところがありますね。
PBR×ROE×PERの組み合わせで割安株を探す
PBRが微妙に使いづらい指標であることはここまでご説明しました。しかしPBRは他の指標と組み合わせることで実力のある割安株を見つけることができます。
PBRの計算式は株価 ÷ 1株あたり純資産(BPS)ですが、実は株価収益率(PER)と自己資本利益率(ROE)とは下記の式で繋がります
※PER = 現在の株価 ÷ 1株あたりの予想当期純利益(EPS)
※ROE = 当期純利益 ÷ 自己資本 ×100
まずPBRで割安に放置されている株を探します。しかしそれだけではイマイチ信憑性がありません。そこで上記の関係を利用して、株価は割安なのに効率よく利益を出している企業を見つけ出します。
例えばPBRが0.5倍の割安株が2つあった時に、PERとROEの関係もチェックします。
A株 PBR 0.5倍 = PER 5倍 × ROE 10% 収益力高
B株 PBR 0.5倍 = PER 50倍 × ROE1% 収益力低
A株とB株では同じPBRですが、A株はROEが10%もある優良企業です。しかしPERが低いために割安に放置されている状態です。
B株はROEが平均よりも低いのにPERが高く、その結果A株と同じPBRになっていますが、ROEを考えるとA株よりも割高と判断できます。
このようにPBRで大雑把に割安の株を探しだした後に、ROEとPERを使えば本当の割安株を探し出すことができます。
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