ストップ高・ストップ安とは?
こちらは2020年5月にいきなり倒産宣言をしたレナウンの板情報
毎日活発に取引されている株ですが、株価は一日に値動きが可能な上限と下限が決まっています。
これは制限をもうけることで投資家が急激な損失を被らないように、投資家保護の目的で設置されたもので「値幅制限」といいます。
この値幅制限いっぱい上まで動いたものをストップ高・下まで動いたものをストップ安と呼びます。
上のレナウンの板情報は売りの値幅制限が付いた大引け後のものですが、通常は売り板、買い板ともに、指値がびっしりはいっているのですが、買い側の注文がすべて空欄になっています。
倒産によるものですのでしばらくはストップ安が続きますが、ひとまず48円で止まっているのは値幅制限があるからであって、もしなければ1日で株価は一桁まで落ちていたでしょう。
ちなみに倒産のような特殊な状況では空売りは制限されますので、このストップ安を誘引したのは今まで買いで持っていた人たちの投げ売りで、Twitterは阿鼻叫喚となっておりました。
連続ストップ高の例
こちらは2020年1月の(9867)ソレキア株、9日連続ストップ高
こちらは半導体やシステム開発企業であるソレキア株のチャートです。
9日間連続でストップ高の値幅制限がつきました。この急激な上昇は意図的に株価を吊り上げる仕手筋によるものとも言われていますが、とりあえず値幅制限がありましたので、毎日2~3割程度の上昇幅で止まりつつ、時間をかけて上がっているのがわかります。
これをまどろっこしいと考えて値幅制限なんていらないって言う方もいますが、もし値幅制限がないと、例えば株のように値幅制限が無いFXなどですと下記の様なことが起こります。
値幅制限がないFXの場合
こちらは2015年のスイスフランショック
こちらは株と違って値幅制限のないFXのユーロスイスのチャートです。
この時のチャートは、直前までスイス中銀が1.2000を割りそうになると必ず介入して買い支える事をしていたので、たくさんの投資家が1.2000を背にして強気のロング(買い)で入っていました。
しかし2015年1月15日に突然スイス中銀が買い支えることをやめるとアナウンスを出したところ、ユーロスイスの値下がり幅だと直感的にわかりにくいのでドル円に換算して言いますと、1日で40円程度の大暴落が起きました。
値幅制限がない、つまりストップ安がないので価格はどこまでも自由落下です。
この時のデータは発表されていますが、日本人投資家で借金を抱えた人は1137人、総額19億円といわれ、一人あたり170万円の借金を作っていますので、この株の値幅制限というシステムは投資を行う上で必須なシステムということがよくわかります。
株の値幅制限にはルールがある。
株価 | 制限値幅 |
100円未満 | 上下 30円 |
200円未満 | 50円 |
500円未満 | 80円 |
700 円未満 | 100円 |
1,000円未満 | 150円 |
1,500円未満 | 300円 |
2,000円未満 | 400円 |
3,000円未満 | 500円 |
5,000円未満 | 700円 |
7,000 円未満 | 1,000円 |
10,000円未満 | 1,500円 |
※10000円以上は略
こちらは値幅制限表です。株価によって一日に動ける範囲が細かく決められています。10000円以上も株価でも細かく値幅が決まっていますが、表が3倍位の長さになってしまうので今回は10000円未満までにおさめました。
値幅制限の基準となる値段は前日の終値です。そこから15%~30%程度までで最大値幅が決まっているのがわかると思います。
この値幅まで価格が達するとストップとされ、それ以上は動きません。
値幅制限の特別措置
(1)ストップ高となり、かつ、ストップ配分も行われず売買高が0株
(2)売買高が0株のまま午後立会終了を迎え、午後立会終了時に限りストップ高で売買が成立し、かつ、ストップ高に買呼値の残数あり
値幅制限ですが、上場している銘柄が3日連続で上記のどちらかの条件を満たしますと、その翌営業日から制限値幅が二倍に拡大されます。
(ただしストップ高の場合は上限が二倍に、ストップ安の場合は下限が二倍になります)
ストップ安では売りたくても売れなくなる
ストップ安になった場合はすぐに損切りをしたいところですが、現実問題として買い注文がありませんので売却が難しいということがあります。
ですので、投資家にやれることは成り行きで注文をだすか、ストップ安が止まるまで待ってリバウンド時に売るくらいしか対処方法がなくなります。
特に倒産などの場合ですと問答無用で成り行き注文ですね。リバウンドはほぼ無いと思ってください。
買いと売りの注文がどちらかに極端に偏っている場合に注文が少ない側の分だけ売買を成立させ、各証券会社の注文数に比例して配分するルール。
ストップ高・ストップ安の売り時買い時
ストップ高やストップ安になると、多くの人は次の日も同じ方向へ動くと考えて飛び乗りがちですが、実際のところ次の日もぐんぐん一方後に伸びていくのは5~6割程度と言ったところで確実ではありません。
ですので、次からはストップ高・ストップ安が実際に起きたときの対処方法をまとめておきたいと思います。
一時的な悪材料かどうか?
値幅制限がかかったときにまず精査するべきはその時に出たニュースの内容です。
例えば業務内容と関係のないところで発生した※特別利益や特別損失による値動きはすぐに値段の是正がおこりやすいです。
また、同業他社の経営不安などに引っ張られる値動きも一時的なものになることが多いです。
こういったニュースに関しては利益がでているならばストップ高の値段で指値で売り注文をだしておく事がおすすめです。
指値を入れておけばその日の引けで高値で注文が約定しますし、もし下がってもその瞬間に注文が通りますので痛みはほぼ無いです。欲を出さないのが一番というわけです。
もし損失が出ていた場合も1~2日持ち越して価格が是正されるのを待っても助かる場合が多いです。
特別利益・・保有目的だった株式や債券などの売却による利益など
特別損失・・自然災害や、前期以前の会計処理の誤謬修正による損失など
会社の規模に対して具体的な数値のインパクトはどうか?
値幅制限がかかるくらいに大きな材料が、本業に影響があるかどうかを見極めるのは大切です。営業利益の上下や赤字転落など明確な材料はその後も引き続き一方後に動きやすい特徴があります。
ここ最近で企業の営業利益に大きく影響があったニュースは、6937古河電池がバイポーラ型蓄電池という従来のリチウムイオンと比べ、寿命、コスト、リサイクル性、エネルギー密度など全てにおいて優れている電池の開発に成功したニュースが出たときです。
これはまず電池の技術革新というのはなかなか新しいものが出てこない中で、電気自動車がこれから世界のスタンダードになる流れで、古河電池が主力としている電力貯蔵用電池の市場規模が2020年には3000億程度に対して2030年には8000億円程度の市場規模になるということが関係しています。
値幅制限がかかる直前は古河電池の時価総額は200億円程度でしたが、その会社が大きな市場で世界トップクラスの電池を開発したとあれば営業利益に関係しないわけがありません。
結局7日程度伸び続け、一時ニュース発表前の3倍程度まで株価が伸びましたが、現在は2倍程度の株価で落ち着いています。
このように営業利益に直接関係のあるニュースの場合は利益がでていたら持ち越し。損失がでていたら即損切りという判断が無難です。(損切りできるかどうかは別として)
企業の利益に対して明確な数値がわからない場合は一旦決済
こちらは薬品株などに多い事例なのですが、「○○の薬の開発に成功!来年から臨床試験を開始」というニュースで株価が急騰することがあります。
コロナ期間中などは特に大きなお金が動いていたのでこの手のニュースはイナゴ投資家が一気に飛び乗ってきます。
しかし現実問題として臨床試験で薬効が確認されるかどうかは誰にもわからないことなのです。おそらく薬を開発した研究者たちでもわからないでしょう。
ですので、この類の値上がりはまだ未確定なニュースで将来の可能性にかけての投資となります。
世界中で国からお金がばらまかれて金余りの市場では上がりやすいですが、お金の出どころの口が締まれば一気に引いていくものですので注意が必要です。