優待クロスとは?
現物株を購入しますと、株主さんには年に1~2回お食事券やクオカードなどの「株主優待」がもらえます。
株主優待はもともと「おまけ」程度の位置づけで、優待がほしいからと言ってわざわざ株を購入する人はごく一部の投資家だけでした。
しかしこの優待クロスという裏技が株主優待の人気を跳ね上げます。
通常、株主優待を手に入れるためには株を購入しなければいけませんので、その株が下落して損をするリスクがあります。
5000円分の株主優待を手に入れるためにマイナス3万円のような下落リスクを抱えるのは現実的ではないですね。
しかし株サヤ取りでおなじみの「売りと買いの両方を持つ両建て」を応用すれば下落リスクなしで株を所有できて、株主優待が手に入ってしまうんです。これが優待クロスです。
優待クロスは別名「株主優待タダ取り」と呼ばれるくらいにリスクの低い方法です。
まず大まかにやり方を説明しますと・・・
株は、買ってから株主の権利が発生するまでに手続きなどで2日かかります。
優待クロスで、優待をゲットするためには株主優待制度がある会社の権利確定日に株主になっていないといけないので、その2日前の権利付き最終日(この日までに株を買えば株主名簿に名前が載る)までに「信用売」と「現物買」で両建てします。
すると2日後の株主名簿に自分の名前が登録されますので、後日企業さんが株主に向けて優待品を送ってくれるという流れです。
まずは優待クロスの基礎情報を確認
株主優待を手に入れるためには、権利付き最終日に「株の現物」を持っていなければいけません。(信用買いではダメです)
この権利付き最終日というのは企業の決算月にあり、日本の企業ですと3月と9月に決算日が多いので、この月は優待クロストレーダー達はソワソワし始めます。
もちろん決算月は企業によって違うので通年で優待クロスはできますが、最近はこの優待クロスの手法がだいぶ広まりましたので、たとえば優待が人気のマクドナルドですと、優待クロスで株を買うのに合わせて空売りをしますが、権利付き最終日の3ヶ月も前に一般信用の在庫が無くなっていたりしますから、最近は優待が人気の銘柄での優待クロスは難しくなっています。(FXなどと違って、株は空売りするための在庫数が決まってるんですよね)
さて、株主優待を手に入れるための権利付き最終日ですが、企業によって日にちは多少ズレますが、基本的には決算月の月末です。
どのような流れになっているかと言いますと・・・
26日(日) | 27日(月) | 28日(火) | 29日(水) | 30日(木) | 31日(金) | 1日(土) |
権利付き最終日 (この日までに株を購入) |
権利落ち日 (※現渡をして株を手放します) |
権利確定日 (株主の権利が確定!) |
権利付き最終日:この日に現物で株をもっている人が、2日営業日後の権利確定日に株主の権利をもらうことができます。
権利落ち日:権利付き最終日の翌日です。ここで下記の現渡を行い株を早々に手放します。
※現渡(げんわたし):既に持っている現物株で、空売りしている信用銘柄の返済をすることです。
空売りした銘柄は、反対売買である買い注文を行えば決済できますが、これだと手数料がかかってしまいます。しかし、現物株と引き換えに信用取引の売り建玉を「現渡」で返済すれば手数料がかからないのです。
権利確定日:株主優待が貰える権利が確定する日です。ここでは株を持っている必要はありません。
優待クロスのやり方
上記を踏まえまして、優待クロスのやり方ですが、大切なのは権利付き最終日の市場が閉まるまでに現物で株をもちつつ、一般信用(制度信用でも可)で同数の株を空売りして両建ての状態をつくります。
ここで買いと売り両方を持つことで、価格が動いても損をしない状態を作るんです。
そして翌日の権利落ち日ですが、ここで証券会社から借りて空売りしている株を、現物の買いで持っている現物株で返済する「現渡」をおこなって、ポジションを決済します。
つまり株を両建てして価格変動で損失を被るリスクを無効化して、優待がもらえる権利だけを手に入れて、貸株料(金利)を取られる前に持っている売りと買いのポジションを相殺して証券会社に返却して素早く逃げるという流れです。
ちなみに余裕を持って、権利付き最終日よりも1週間前などにポジションを持っておく分には問題ありませんが(貸株料などのコストはその分余分にかかります)、もしぎりぎりの権利付き最終日に優待クロスで両建てをしようとする場合は、前日の大引け後15時から権利付き最終日当日の朝8時59分までに成り行き注文を出しておきます。
理由としては権利付き最終日の株式市場が開いている取引時間中に買いと売りの両建てをする場合、値段が動いているために買いと売りの約定金額が一致しないからです。
損益がプラスになればいいですが、優待を狙ってマイナスを出してしまっては優待クロスの意味がありませんからね。
🔰 現渡(げんわたし)は持っている現物の株を信用取引の売りの返済に当てるものですが、よく似た言葉の現引(げんびき)は、信用取引で購入した建玉分の資金を預け入れて現物株式を手に入れるものです。(どちらも手数料無料)
なので手数料のかかる現物株購入時に、直接買わずに「信用取引買い→現引→現物株を手に入れる」というひと手間をかけると現物株を購入する手数料が無料になります。
権利付き最終日に向かって株価は上がる
優待がもらえる権利が得られる権利付き最終日ですが、株価はこの日に向かって上がり、この日を境に下がるというパターンが良く見られます。
特に株主優待が人気のイオンやオリックス、すかいらーく、マクドナルドなど個人投資家に好まれる銘柄によくみられる現象です。個人投資家の皆さんは権利だけ手に入れたら手放してしまうんですね。
なので取引をする際にはこの特性を理解してポジションを持つほうが勝利につながるかと思います。
優待クロスの手数料と注意点
現物買いのコスト:売買委託手数料(※信用取引で購入してから現引きすると、現物株を買う時にかかる手数料は無料)
信用売りのコスト:売買委託手数料 + 信用取引貸株料 + 逆日歩(制度信用のみ)
優待品の価値が手数料を上回る銘柄を選ぶ
優待クロスの手数料ですが、それぞれの証券会社によって変わって来ますし、計算が面倒なので、みなさんが知っておけば良いだいたいの目安を書いておきますね。
あみやき亭(4000円お食事券) 100株(約34万円)
手数料は1週間トータルで約163円程度
伊藤ハム米久HD(5000円相当の自社製品)1000株(約66万円)
手数料は1週間で298円程度 ただし2019年に1000株で3日1500円逆日歩発生
コロワイド(2万円優待券)500株(110万円) 手数料は1週間497円
ただし、2017年に100株あたり3日6150円の高額逆日歩が発生!
優待クロスは先に一般信用売りの在庫を確保
一般信用はこんな感じに売建可能数量というものが証券会社によって決まっています
人気の銘柄は売建可能数量がまったく無いことがザラです
こちらは証券会社の一般信用の在庫を教えてくれるサイトです
優待クロスではぜひ使って欲しい一般信用の空売りですが、証券会社ごとに売りの在庫がありまして、優待クロス人気銘柄は争奪戦となります。
ですので優待が充実している銘柄は3ヶ月前でも一般信用の売り在庫が0何ていう話はよくあります。(その場合はマメにチェックして入荷を待ちます)
そんな時、貸借銘柄(信用度が高い銘柄)でしたら制度信用で空売りができまして、一般信用のように在庫を気にする必要がなく空売りできますが、さきほども書いたように、制度信用の場合は逆日歩の可能性もあります。
特に優待クロス銘柄は逆日歩が多いので、欲を出さずに在庫のある一般信用のできる銘柄を狙うことをおすすめしますよ。
優待クロスに向いている証券会社
証券会社名 | 貸株料(一般信用) | 銘柄数 | 在庫数 |
SMBC日興証券 | 1.40% | 約2000社 | ◎ |
SBI証券 |
1.10% | 約2000社 | ◯ |
auカブコム証券 | 1.50% | 約2000社 | ◎ |