短期サヤ取りペアの選び方
株のサヤ取りですが、短期・中期・長期のスタイルにわかれます。
これはBLSシステムを使ったサヤ取りは統計データに基づいて取引をおこないますが、統計データというものはデータ数が多くなる(期間が長い)ほど信頼性が高くなり、期間が短いほど信頼性が落ちます。
ですので、短期・中期・長期スタンスによって参考にする散布図やサヤチャートの期間が変わり、損切りを許容しつつ回転させたいトレーダーさんは短期スタイル、損切りをせずにエントリーを絞って安全に取引をしたいトレーダーさんは長期スタイルに自然となっていくかと思います。
ですので、今回は短期・中期・長期の3つのスタイル別に損切りやチャート分析のコツなどをお話していきたいと思います。
短期スタイルの目安
短期スタイル | |
ポジションを持つ期間 | 半日~1ヶ月 |
業種 | 同業種&異業種 |
使うチャートの期間 | 1年・3年 |
損切り | 必須 |
ナンピン | 無し |
リターン | 小 |
サヤ取りの短期スタイルは、突発的な広がりを狙うのが中心のため、勝率はどうしても中長期に比べて落ちるためおすすめはしません。
しかし、トレードが楽しい人や、まだ株のトレード歴は浅いけど早く上達したいという人には、小さなロットで細かく資金を回して経験がたくさん積めるスタイルではあります。
短期スタイルは1年チャートがメインですので、相関がくずれる可能性は長期のチャートを使うよりもかなり高いです。
そのため損切りの設定が必須となります。適正乖離率チャートでギリギリまで引きつけてエントリーできた場合は建玉金額の3~4%程度、少し早めに入ってしまった場合で最大5~6%程度で損切りでしょうか。
この感覚は人によって変わりますので、BLSシステムに装備されている仮想ポジション機能などで練習して下さい。
また、選びたい短期スタイル銘柄の特徴としては値動きが活発なものが良いです。この場合同業種ペアはやはり動きが鈍いので相関が崩れるリスクをとって異業種での取引がメインとなります。
ちなみにサヤ取りは、サヤが開いている最中にはいるので基本的に「逆張り」です。つまりエントリーしてすぐの期間は損失が増えるパターンが当たり前のようにあります。
ですので、異常値が出た時にとびのりエントリーするよりは、一旦の反発を確認してそこではいるという、頭(と尻尾)を狙わない割り切りがこの短期売買を成功させる肝になりそうです。
BLSシステムでの短期銘柄の選び方
短期売買の時は1年相関を選んで検索をかけます。
この時に低位株を狙うのはなにかニュースが出た時に一攫千金を狙えますが、行き過ぎることも多くリスクも大きいので、できればある程度の株価で流動性がある銘柄同士のサヤ取りをおすすめします。
また、検索の際に相関係数が高すぎると値動きが小さくなる傾向があります。短期スタンスの場合は相関を多少落として値動きの良さを重視するという考え方もあります。
短期売買のおすすめチャート
実際に短期トレードにおすすめのチャートをご紹介します。(画像をクリックで拡大できます)
こちらは1年チャートで見たセイコーエプソンとクボタのサヤ取りペアです。左下の散布図は思いっきり値段が飛んで異常値がでています。
右下のヒストグラムは頂点が1つの綺麗な形になっていますのでおすすめ。(ここで頂点が何個もある形はダメで中央が高く、綺麗な山の形が理想)
そして右側真ん中の適正乖離率チャートも、この一年では最大値と言うか異常値レベルまで飛んでいますね。異常値なので念の為にニュースが出ていないかチェックします。
BLSシステムメイン画面の「企業名」などの上で右クリックをすれば「株探」などのニュースサイトや「バフェットコード」などの銘柄検証サイトへワンクリックで飛べるようになります。
するとクボタのニュースが出ていますね。内容はSMBC日興が投資判断を格上げというもの。これでサヤが一時的に拡大していた模様です。
しかしこの証券会社が出すレーティングというのはそれだけで相関が崩れるほどのものでないことがほとんどです。
決算内容などの大きな変化には注意を払う必要がありますが、この手のニュースは1年中出ますのでこの場合は、一旦反発を確認できたら入って問題なさそうですね。
3年チャートもチェック
短期売買の場合3年チャートもチェックして下さい。
実際に見てみますと、3年の散布図も悪くない形です。ヒストグラムも頂点がはっきり出ていて3年間でもかなり端っこにいますので、より安全だということがわかります。
なお、通常サヤ取りは企業ペアの財務状況や決算のチェックが必須ですが、財務状況について市場の見方が一致するには時間がかかりますので、短期売買の場合はそこまで影響は高くありません。
中期サヤ取りペアの選び方
続いては中期スタイルです。以前までは一番おすすめの方法としていましたが、コロナ後からは難しい時期が続いており、現在のおすすめは長期トレードです。
しかし3年・5年チャート分析を軸に分析しますので、1年チャートのみの分析に比べて相関崩れの心配はだいぶ減ります。5年チャートで分析した相関が崩れたという事は5年に一度の事件ということで諦めもつきますからね。
また、安定志向の方は同業種のみで損切りは遅めの少し長い期間、リスクを取って資金効率を良くしたい方は異業種で損切りは浅めで短めの期間で取引をします。
異業種を混ぜると値動きが良いので利益を作るペースは高くなりますが、年に数回のサヤの大崩れに出会う可能性もあるのは心に留めておきましょう。
ちなみに長く持つ事もある中期スタイルあたりからは、貸株料などの信用取引コストも考慮にいれなければいけませんので、業界最安レベルのSBIネオトレード証券を使って手数料を抑えることをおすすめします。
中期スタイルの目安
中期スタイル | |
ポジションを持つ期間 | 1日~6ヶ月 |
業種 | 同業種&異業種 |
使うチャートの期間 | コロナ以降・3年~5年分析 |
損切り | 同業種は資金量による 異業種は必須 |
ナンピン | 1回まで |
リターン | 中 |
中期の銘柄ペア分析の手順としては、まず5年間で相関が強いものを選びます。
その後3年チャートなどに落とし込んでエントリータイミングをとります。
この時に、「3年期間も5年期間もサヤの限界まで開いている」という銘柄ペアが良いのですが、「3年期間ではサヤの限界だけど5年ではまだ少し余裕がある」時は、「株価ボードに登録してひとまず別のペアを探す」が正解です。
BLSシステムでの中期銘柄の選び方
中期スタイルでは必ず5年相関から銘柄を探し始めます。デフォルトでは相関係数は0.9になっていますが、銘柄ペアの候補が少ない場合は0.85あたりまで下げてみましょう。
もちろん0.8くらいの相関銘柄ペアにも異常値が出ていたり、長期の相関が素晴らしい銘柄が隠れていますが、相関係数を下げるとそれだけ膨大な量の銘柄から選出することになるので、検索時間はかかるようになります。
ちなみに中期トレードの場合重要なのが、同業種か異業種かによって損切の設定が変わるということです。
同業種ならば相関はそうそう崩れませんので、資金に余裕があれば3~5%程度サヤが逆行した時に追加でポジションを積み増しします(戦略的ナンピン)損切もよほどの相関崩れが無い限りは強気で大丈夫です。
しかし異業種ペアの場合はそこで損切という判断も考えなければいけませんので、そこはスタイルによって各自判断して下さい。
それならば一見、「同業種に絞ったほうがよいのでは?」となりますが、値動きの良い「異業種」銘柄をあえて選び、「損切を素早く行い、すぐに別のチャンス銘柄に乗り換えて資金効率を上げる」
という方法は、トレードに慣れればお金が増えるスピードも同業種ペアよりも早くなります。
同業種は3ヶ月以上サヤが戻らないということも多いですからね。どちらが正解ということはありませんので、各自お好みで選んでくださいね。
中期のおすすめチャート
こちらはコマツ製作所と日立建機の3年チャートです。
左下の散布図は綺麗に相関が出ており、同業種なので安心感があります。損切もこのように相関がきれいにでているものならば、よほどのニュースが出ない限りは「無し」という判断でよく、資金があるならむしろポジションを積み増しという判断もありです。(損切りに関してはBLS運用者の間でも意見が分かれるところですが)
また、チャートの分析として気になる所ですが、右下のヒストグラムも微妙に双峰型(頂点が2つある)っぽくも見えますが、目立つ頂点は1つなのでこれは許容範囲内としてます。
右側真ん中の適正乖離率チャートも直近では限界値まで来ていますね。これはBLSだけを見るとエントリー確定なのですが、ひとつ確認しておくべきは、右上の「サヤチャート」です。
こちらを確認しますとボリンジャーバンドが狭く、長いこと値動きが低迷しています。つまりこの銘柄は値動きが乏しいので利確には時間がかかることが予想されます。
もしリスクを取って早めの利確を目指すならば、次のようなチャートを狙います。
中期だけど早めの利確を目指すならこういうチャート
こちらはJASDAQのオリエンタルコンサルタンツと丸千代山岡家の異業種ペアです。
散布図では限界値まで開いており、ヒストグラムは奇跡的な美しさ。そしてサヤチャートを見ると先程の同業種ペアよりも値動きが活発なことがわかります。
中期ながら短期で回転させたい人はこういう銘柄を狙うのが王道です。ただし異業種ペアは同業種ペアに比べて相関が崩れる可能性は高いので損切設定は必須ですよ。
また、中期トレード以上でしたらGMOのツールで財務などのチェックもしておくと、より安心感がありますね。
長期サヤ取りペアの選び方
最後に長期スタイルご紹介です。コロナ前後では株の相関関係が大きく変わりましたので、現在は中期よりもこの長期トレードが一番安定しています。
長期でサヤ取りを行う利点ですが、「とにかく楽」という一言に尽きます。チェックは週に一度で大丈夫なレベルです。
しかし勝率は非常に高く、資金と時間さえあれば非常に高い勝率が得られます。
ただし、銘柄選びは倒産リスクを避けるためにできるだけ企業規模の大きいものに厳選しなければいけないのと、エントリーチャンス・利益確定ともに数が少ないのは覚悟しなければいけません。
また、「統計上、いずれ戻る」という信念が必要ですが、その裏付けとしてきちんとBLSシステムの分析ロジックを理解してできていることが大前提です(そうでなければ信じて待つことができません)
なお、長く持つことによって貸株料などの信用取引コストがかかりますので、手数料が安いSBIネオトレード証券などでコストを抑える工夫が必要です。
長期スタイルの目安
長期スタイル | |
ポジションを持つ期間 | 1週間~1年 |
業種 | 同業種(財務諸表もチェック) |
使うチャートの期間 | 5年・10年 |
損切り | 基本的にはなし |
ナンピン | 3回程度 |
リターン | 大 |
長期スタイルですが、1番重要な部分は10年期間をつかうということです。
そして当たり前のようにナンピンをいれます。いくら精度が高いBLSシステムとは言え、突発的なサヤの崩れを予測することは至難の業ですので、資金管理をきっちりした上で2~3回程度ナンピンすることを前提にエントリーします。
損切りは個別に倒産や粉飾決算で上場廃止など、よほどのニュースが出ない限りありませんが、資金量によっては損切を作ったほうが良い場合もあります。
その場合は投資額に対して10~15%程度で見積もる方が長期の場合は多いかと思います。
その株を買った理由がなくなった時、その株にはもうこだわらない。それは売り時だ。
自分に何かアイデアがあり、それが正しくないと判明した時、ポジションを閉じて次に行くべきだ。わたしはしばしば間違うので、これはしばしば起こる。
含み益になっているか含み損になっているかは問題じゃない。株式はあなたが得をしているか損をしているかを知らない。
それは重要じゃないんだ。投資に自分のエゴは重要じゃない。重要なのはその株で儲けられるかどうかだ。
これは多くの皆さんがどれくらい損失がでているか、株価がいくらになったかでイグジット(利確・損切り)を考えていることに対して、「株が上がる(下がる)理由がなくなった時」がイグジットのタイミングだと話しています。
この考え方はBLSシステムの長期スタンスでは非常に役に立つ部分なので、参考にされると良いと思います。
BLSシステムでの長期銘柄選び
まずは銘柄ペア検索で相関係数を「5年」と「同業種」にセット、株価やシグマの上限も撤廃して検索をかけます。できれば個別で時価総額500億円を超えている企業にしぼるなどの基準を追加できたらより安心ですね。
ちなみに5年相関となるとさすがに相関係数がデフォルトの0.9以上などは少ないので、0.85や0.8当たりまで下げても問題ありません。
長期スタイルでのおすすめチャート
こちらは8795T&Dホールディングスと8750第一生命ホールディングスの5年間の相関です。散布図はとてもきれいで、ヒストグラムも申し分ありません。保険業界や銀行業界などのクローズドな業界はこういう手堅い形がチラホラあります。
こちらは10年の適正乖離率チャートです。ここを見ると過去最大にサヤが開いたときまでまだ若干の余裕があるので、ナンピンを何回かに分けることを想定します。
そしてこちらは株探の直近の決算。両社の似たような売上高推移をみると同業者として収益構造が近いということがわかります。
以前よりも決算の内容が重視されなくなっている株の世界ですが、一応長期スタンスなので気になるところだけを見ると、現在のサヤが乖離している原因でもある経常利益。
T&Dホールディングスの経常益が第一生命と比較するとコロナの影響で激減しているのは気になりますね。しかし保険業界は収益構造が非常に似ており、他社が成功した分野に後出しで参入してくるのが普通であり、いずれ是正される可能性が高いです。
なお、第一生命は3月に自社株買いを発表しておりまして、現在これを材料に買われています。しかし高値圏にあることから自社株買いは活発ではなく、下値が硬い可能性はありますが、テーパリングの議論を控えているのにここから積極的に上に向かう展開ではないところです。
BLSシステムを使ったサヤ取りペア選び方のコツ【短期・中期・長期】 まとめ