株式併合とは?
株取引を長くやっている方でしたら、株価が突然10倍になった!なんて光景を見たことがある方もいらっしゃるかもしれません。
しかし株価は一日のうちに動ける値幅が決まっているので、いきなり10倍なんてことはあるわけがなく、その理由を調べますと大抵「株式併合」という言葉がでてきます。
株式併合は読んで字のごとく、株式を併合(合わせて一つにまとめる)ということなのですが、具体的にどうするかと言いますと、100株を1株に、10株を1株に、2株を1株に、というように併合して株式の数を減らすことです。
ただし、桁が変わった分は株価の値段にも反映されます。
たとえば100株100円(100株×100円=10000円)の株が、株式併合で10株になった場合は株価の桁がふえて1000円に修正されるんです。(10株×1000円=10000円)
ですので、株式併合は基本的には中立であって、株価に影響はしません。(しかし影響がある場合もあるのでこれは後ほど・・)
株式の売買単位(単元)の統一
近年で、株式併合が話題になったところと言えば、2017年の9月27日に300を超える企業が一斉に単元株の変更を行いました。
これはもともと株式市場で購入可能な株の単位が、1株単位、100株単位、1000株単位など入り乱れて少しわかりにくいということで、2018年の10月までに「株式の取引単位を100株で統一する」という全国証券取引所からのお達しに先立って行われました。
また、東京証券取引所では個人投資家が流入してくれやすいように、投資に必要な最低金額を「5万〜50万円」とすることを推奨していまして、取引単位が1000株だったものが100株になれば、それまで高かった株も安く買えるようになりますね。
そしてこの時ですが、売買単位のみを変更した会社と、株式併合と売買単位の変更を同時におこなって、投資単位の調整をおこなった会社もありました、
例えば元々1000円の株価で単元が1000株だった株があった場合、株の購入に最低1000円×1000株=100万円の資金が必要でした。
しかし1000株→100株に変更されると、1000円×100株で10万円から購入することができます。
しかし企業によっては、最低投資金額が安くなって株主数が増えて管理コストが上昇することを嫌う企業もあります。
そこで単元が100株に変更されるついでに、5株→1株などに株式併合をすると、株価は5倍の5000円で「5000円×100株=50万円」の最低投資金額なり、安すぎず高すぎずの価格に調整できるのです
株式併合を行うと株価はどうなる?
株式併合ですが、基本的には株価に与える影響は無風、また軽微とされています。しかし実際に企業が株式併合を発表する時は合わせて何らかの施策を発表することが多く、それによって株価が動くことがあります。
次では株式併合で株価が動いた例をご紹介していきますね。
ガンホー(3765)の株式併合後のチャート
上記のチャートはスマホゲームのパズドラで当てたガンホー・オンラインエンターテイメントの株式併合後の株価推移です。
この時ガンホーがおこなった株式併合ですが、当時のガンホー株発行済株式総数は東京証券取引所の上場株式数の平均と比較すると6.6倍も多く、上場規程に適さない状況でした。
そのため株式併合を行うことで東証の上場規程に収まるということで市場に好感されました。
ただしこの株価の上昇は、株式併合のためと言うよりも、この時同時に発表された「株式併合が承認されることを条件にした50億株の自社株買い」によるものかと思われます。
株式併合だけを見ていたら株価が上がる理由がわからない事例でございます。
ビジョナリーHD(9263)の株式併合後のチャート
ビジョナリーHDはメガネスーパーなどを傘下に持つ企業で、配当利回りが良いことで有名です。一時期は利回り600%超えという全銘柄トップの配当利回りを誇っていました。
しかし2019年6月18日に10株→1株の株式併合をすることを発表したのですが、次の営業日に大きく下落。
株式併合は通常そこまで株価に影響がないはずなのですがこの下落、株式併合により優待の内容が変わる事が影響して下がったようです。
実はビジョナリーHDの優待は、それまで1000株を保有していれば30000円相当の優待がもらえたのですが、株式併合で100株になると、1000円相当の優待に変わってしまうそうなんです。株式併合後に100株=1000株とは数えてくれなかったんですよね。
そのため今まで優待目当てでビジョナリー株を持っていた投資家が一気に離れ、その後どんどん株価が下がってしまいましたね。
株価対策としての株式併合
株式併合は基本的には株価への影響は軽微ですが、時に株価の見た目を引き上げるためにおこなわれることがあります。
これは長い間不景気が続く日本企業によくあることなのですが、一般的に300円以下の株は低位株と呼ばれ、企業イメージがあまり良くありません。しかし市場を見ると300円以下どころか50円なんて株も存在します。
そこで株式併合なのですが、例えば100円の株を5株→1株にすれば株価は5倍の500円になります。
これによって、東京証券取引所が推奨している投資に必要な最低金額を「5万〜50万円」に収めることもできますし、株価の見た目も良くなると言うわけです。
スクイーズアウトとは?
スクイーズアウトとは、少数の株主を追い出して大株主の発言力を強くする手法です。主に経営再建中の企業などでおこなわれます。特にM&A後の企業などは持ち株比率を100%にして意思決定を迅速にしたいのでスクイーズアウトがよく行われます。
スクイーズアウトの手法は現金対価株式交換など色々な方法があるのですが、株式併合も少数株主を追い出すためのスクイーズアウトの手法として利用されます。
具体的には100000株を持っている大株主Aの権限を確固たるものにするために500株以下の株主B達を追い出したい場合、株式併合で1000株→1株にしてしまいます。
すると大株主Aの持ち株は100株ですが、500株もっていたBの株は0.5株になってしまいます。
持っている株が1株未満の場合は株を保有しているとは認められないので、その額を企業が現金で買い取れることになっています。
これが株式併合を使ったスクイーズアウトです。
株式併合があれば株式分割もある
ここまで株式併合についてお話してきましたが、もちろんその反対の株を分ける「株式分割」も存在します。
例えば100株3000円の株を1株→2株に分割した場合は株は200株と倍になりますが、株価は半分の1500円になりトータルの価値は変わりません。考え方は株式併合と同じですね。
株式分割の目的としては、「流動性を高める」という狙いがあります。もともとの株価が高すぎる株が分割したことで買いやすくなればより多くの参加者が見込めますので、一時的に株価が上がることも多いです。
また、東証一部より小さい規模の企業が参加するマザーズなどの市場から、東証一部に移動する場合も株式分割が利用されることがあります。
東証一部に所属するための条件に「株主数」と「流通株式数」があるのですが、この2つは株式分割をおこなうことで条件を満たせる場合が多いのです。
株式併合・分割で、一番影響がでるのは「参加者の層」
株式併合と分割ですが、一時的な株価の上下よりも長期的に注目するべきは「参加者の層」です。
例えば100円台の株と、1000円台の株では参加者がガラリと変わります。
100円台の割安株は大口が入りにくく、価格の動きは鈍いですが、1000円台の株価ですと大口もはいりますので活発に取引されたりします。
しかし割安株もちょっとしたニュースがあると資金が少ない人達もわっと飛びつきますので短期的に動きやすくなります。
今まで聞いてきたテクニカル指標が急に効かなくなったり、メインで使っているローソク時間を変更したほうがよくなったりしますので注意が必要です。
株式分割・併合されたときはチャートの表示に注意
株式分割が起こりますと、チャート上で色々と不具合が起こることがあります。例えば下記は分割前の3141ウエルシアホールディングスと4684オービックのチャートです(画像はクリックで拡大できます)
上記は当HPでおすすめしている株サヤ取りシステムのチャートですが、株価のデータの形式によっては株式分割・併合が起きるとこのようにチャートが崩れてしまうことがあります。データ屋さんにとっては非常にやっかいな問題なんですね。
株価を扱うソフトをご利用中に株式併合・分割が起こった場合の対策方法としては、過去の株価データをすべて削除して、新しく修正された株価データをダウンロードすれば正常に戻ります。
株式併合&株式分割が起こると株価は下がるの? まとめ