PTSを使った夜間取引とは?
通常株の取引は、証券会社と証券取引所(東京証券取引所など)を通して行われ、取引時間は午前9時から午後15時までです。
しかし複数の証券会社が集まって立ち上げたPTS(Proprietary Trading System)と呼ばれる私設取引所を利用すれば証券取引所を通さずに売買するため、日中の市場が終わった後や深夜でもリアルタイムで株取引を行うことができます。
PTSの仕組み
PTSの仕組みは証券取引所での売買と大差はありません。通常は下記の様にご自宅のパソコンから口座を開いている証券会社に注文をいれれば、あとは証券会社が証券取引所に注文を流して注文を約定してくれます。
PTSの場合は、証券取引所の代わりに私設取引所であるPTSに変わっただけで、お客さんの注文の流れ自体は変わりません。
PTSはジャパンネクストとチャイエックスの2つ
2020年の時点で日本で運営されているPTSは、ジャパンネクストPTS(JNX)とチャイエックスPTS(Chi-X)の2種類があります。
PTSは複数の証券会社が集まって作られています。
ジャパンネクストは2007年から夜間取引専門の私設取引所としてスタート、ゴールドマン・サックスやBNPパリバ証券、SMBC日興証券など全部で33社(2020年4月時点)が参加しています。
チャイエックスは世界最大手の欧州チェイエックス社が2010年に立ち上げました。こちらも現在30社の証券会社が参加していますが、現在チェイエックスで取引できる証券会社は楽天証券のみとなっています。
PTS取引メリットは取引時間が長い
PTSを使う一番の理由はやはり営業時間の長さです。取引可能時間は証券会社ごとに変わりますが、東証が閉まっている夜間でも注文が通ります。
現在PTSに参加している証券会社は下記の3社で、特別に口座の申し込みなども必要なしで取引することができます。
SBI証券 | 楽天証券 | 松井証券 | |
ジャパンネクストPTS | 8:20 ~ 16:00 | 8:20 ~ 16:00 | 8:20 ~ 15:30 |
17:00 ~ 23:59 | 17:30 ~ 23:59 | ||
チャイエックスPTS | 取扱なし | 8:00 ~ 16:00 | 取扱なし |
上記の取引時間を見ると夜間だけでなく東証が休憩中のお昼11時半~12時半でも取引ができますね。
あと手数料が、SBI証券などは日中よりもPTSの方が手数料が5%安いなどの違いもあります。
決算や海外指標の発表にも対応できる
企業の決算は市場が荒れるのを防ぐために、大引け後の15時や15時半に発表されることが多いです。
この時、証券取引所ですと決算がでても取引できるのは翌営業日ですが、PTSならば証券所取引が終了後も注文が可能なので、ポジティブな決算内容だった場合にすぐに注文を入れれば大きく取れる可能性があります。
また、日本時間の深夜に多い、海外の指標の発表時に売買ができたりするのもメリットですね。特に日経平均株価はアメリカのダウに引っ張られることも多いですので、夜中にダウが暴落した時は深夜のうちにポジションを切るなどの先手が打てます。
PTSは東証よりも呼値が細かい
参考:SBIジャパンネクスト(呼値別表)
呼値(よびね)とは、注文価格の単位のことです。
PTSの株価の値段の単位は、東京証券取引所のおよそ10分の1になる事が多いです。
また、東証が開いている時間ですと「SOR有効」の注文を出すことができます。これは、東証、ジャパンネクスト、チャイエックスの3つの取引所の価格を比較し、一番有利な価格を自動で選んで約定してくれる仕組みです。
そのため売り買いともに少しだけ東京証券取引所の価格よりも有利な値段で約定することがあります。
(※SBI証券は1円未満での呼値での注文はできません)
PTSは参考にならない?
夜中にも取引ができるPTSですが、一部の投資家の間ではPTSの値動きは取引の参考にならないとの声があります。
一番の理由としてはやはり証券所取引とPTSを比べた時に、PTSは圧倒的に出来高が少ないからです。
たとえば大口などはPTSに入ってくることはとても少ないです。これはPTSの参加者が少ないために大きな注文が通りにくいからで、取引したくてもできないからなんですね。
このようにPTSには証券所取引と比べて勝手が違うところがありますので、そちらをご紹介していきます。
取扱銘柄が少し少ない
深夜も取引ができる便利なPTSですが、出来高が少ないことに加えて取り扱い銘柄数が少ないです。
とはいっても札幌証券取引所や名古屋証券取引所に上場している銘柄などと、各証券会社が指定している銘柄の一部が取引できないだけでほとんどの方には影響はないかと思いますが、地方の証券取引所にしか上場していない有名銘柄もありますので注意が必要です。
夜間は信用取引ができない(現在は解禁)
証券会社からお金や株を借りての空売りや、レバレッジをかける信用取引は株取引の醍醐味の1つですが、残念ながら午前9時から午後15時までの日中のPTSでしか受け付けていません。
上の表はSBI証券のものをお借りしてきましたが、信用取引の規制に関しては日本証券業協会の規則にのっとったものですので、楽天や松井証券なども信用取引の時間は上記の時間に準拠します。
※追記
2019年8月にジャパンネクストPTSが信用取引を開始され、同年12月にはチャイエックスPTSも信用取引が解禁されました。
これまで対東証比率で4%前後だったのPTSのシェアが、2020年7月時点で7%前後まで増えており、PTSが盛り上がっています。
成行注文ができない
PTSの問題点として市場参加者が少ないというお話をさきほどいたしました。
つまり流動性が少ないため、「売りたい時に売れない、買いたい時に買えない」ということがあります。特に日中の出来高が少ない時はPTSの時間帯は全く値段が動かないなんてことも良くあります。
そのため、成行注文をすると値段が飛んで思わぬ価格で約定してしまったり、大口が大きな資金を使って値段をコントロールできてしまうという事に繋がりますので、PTSはどの証券会社も指値注文のみ受け付けており、成行注文はありません。
半沢直樹でPTSで30%の株を取得?
大人気のドラマ、半沢直樹でPTSでの取引が出てきました。PTSをご存じの方は多分ツッコミどころが多く、逆に楽しめたかと思います。
作中では、スパイラル株という企業の発行株数の30%をPTSで取得していたのですが、思いっきりインサイダー認定される取引でしたね。
900億の取引をこなしつつ株価の変動もなかったですし、下記の画像は別のシーンでの1分足のローソク足チャートなのですが・・・
売り注文が全く入らないまま、しかし大陽線がなく少しずつ伸びていくチャートはシュール過ぎて、さらに値幅制限も無いようでぐんぐん伸びていきます。
まあ株の仕組みを知らない人のほうが大半ですから、これくらいわかりやすくしたほうがウケがいいだろうとの判断かと思います。
実際に視聴率も良いですし私もハマっておりますからね。