株の現物取引と信用取引の違い
株には現物取引と、信用取引の2種類があります。
現物取引というのは「現実にある物の取引(現物)」の名前の通り、証券会社を通して借金などをせずに自分の手持ちのお金で株を買って、買値よりも高くなったら売って利益を出すか、値動きを気にせず配当金でゆっくり利益をだす長期投資の場合に好まれます。
信用取引と違い金利などがかからないというのと、ポジションが強制で決済されてしまう「追証(ロスカット)」という概念がないので、その株を持っている企業が倒産しない限りは安全です。
次に信用取引ですが、こちらは自分のお金で株を買うという部分に関しては現物取引と同じですが、証券会社からお金を借りる事ができて、自分の持っている現金よりもたくさん株を買えたり、空売りと言って、証券会社から株を借りて、もともと自分の手元には無い株を市場で売ることもできます。
取引戦略としての違いを簡単言いますと、現物取引は自分のお金でできる範囲でこつこつと。信用取引はちょっと背伸びしてお金を借りつつアクティブに運用という違いになります。
株の現物取引
現物取引は実際に自分のお金で企業の株券を買うわけですから、株主になる権利が手に入る日時をまたいで保有していると、企業の株主名簿に名前がちゃんと載り、その企業のオーナーの一人として認められます。
すると定期的に企業から会社情報が届いたり、配当金や株主優待が届いたりするようになります。
さらに株主総会という会社の経営について議論する場の参加が認められ、意見を言うこともできます。(ただし株式を少しだけ保有しているよりも多く保有している株主のほうが発言力は強いです)
また、これはあってほしくないことですが、もし株を持っている会社が潰れた場合、その会社が精算して残った資産を株主で分配して受け取ることができます。
ただし倒産ということは株券も紙くず同然となり、残った資産も期待はできませんので財産を受け取れると言ってももちろんトータルはマイナスとなります。
現物取引の3大メリット
1,株主優待がもらえる
株主優待は現物取引で一定の株を購入して、権利確定日と呼ばれる日までその株を持っていれば、商品券や食品などがもらえます。
2,配当金がもらえる
配当金が欲しい企業の決算日の3営業日前までに現物取引で株を持っていると配当金がもらえます。配当金は株の価格の2%前後が多く、年に1~2回もらえます。
3,リスクが少ない
現物取引ですので、株価が下がって損をしてしまうリスクはありますが、信用取引に比べると一気に資産が飛んでしまうような極端なリスクは少ないです。ポジションが強制決済されてしまう追証などの概念もありません。
現物取引のデメリット
1,空売り(FXでいうショート)ができない
現物取引は、自分のお金で株を買うことしかできません。
2,レバレッジがかけられない
信用取引ですとレバレッジを掛けて、自己資金を約3.3倍まで膨らませて多くの株を持つことができますが、現物取引ではできません。
2,売買手数料がかかる
売買手数帳は契約している証券会社によって変わりますが、50万円分の取引あたり、安いところだと180円から、高いところだと1700円くらいかかります。
金やプラチナって現物取引はできるの?
少し話が脱線しますが、株と密接に関わっている商品先物市場では金やプラチナ、原油やトウモコロシなどが売買されています。
ネットで損益を求めて商品先物を売買している限りではただの数字のやり取りでありますが、実は金ならば1000グラム単位、プラチナならば500グラム単位で現物取引を行うことができます。
例えば金の現物取引の場合、倉荷証券(くらにしょうけん)という、倉庫会社が金を保管していることを証明する証券を発行し、それを証券会社に預けて証拠金に充てて売買をしますが、もし実物がほしいのならば倉荷証券をそのまま郵送で受け取るか、金の現物でうけとるかが選べます。
もしここで「現物で受け取る」を希望した場合は、なんと家に金がそのまま届くのです。ただし、現物の受け渡しは多くの証券会社で2ヶ月に一度程度なので時間はかかります。
株の信用取引とは?
株の信用取引は、証券会社に信用取引口座を開設することで、証券会社からお金や株を借りて取引する方法です。
ただし証券会社もお金や株を貸し出すからには、ある程度信用があるお客さんにしかお金や株は貸しだしたくありません。
そのため、信用取引口座の開設にはある程度現物株での取引経験と資産、そしてリスクなどの説明をうけて電子書面にサインして提出しなければいけません。
しかしその手間もあってか、信用取引口座を開設後には元手の約3.3倍までの取引が可能であったり、株を持っていないのに証券会社から株を借りて空売りをすることができたりします。
さて、そんな信用取引ですが、実は信用取引には2種類ありまして、「制度信用取引」と「一般信用取引」に分かれます。
制度信用取引
制度信用取引と一般取引の違いですが、制度信用取引で売買ができる銘柄は証券取引所によって厳選されています。
つまり上場企業の中でも特に信用のある企業の株のみが制度信用取引で取り扱われます。そして更に制度信用銘柄の中から「貸借銘柄」を厳選しています。
この貸借銘柄とはなにかと言いますと、「エリート揃いの制度信用取引の中で空売りができる銘柄」のことです。
つまり制度信用取引では全ての銘柄が空売りできるわけではないということですね。比率で言いますと空売り可能な銘柄は全体の6割程度に収まっています。
いくら制度信用銘柄に選ばれたからと言って、人気がなく流動性が低い株などは大口が一気に空売りをすると値段が大きく動いてしまいますので、証券取引所がそのような株価の変動が起きそうな銘柄は貸借銘柄としては認めないのです。
一般信用取引
次に一般信用取引ですが、こちらは証券取引所が選定した銘柄ではなく、証券会社と個人投資家との間で契約を結んで、空売りなどの許可をもらって取引する方法です。
証券取引所が定める制度信用取引の銘柄はどこの証券取引所でも条件は同じですが、一般信用はあくまで「証券会社と個人」の間で結ぶ信用取引ですので、空売りできる銘柄や期限、金利なども証券会社によって異なります。
ですので、一般信用取引を行う時は証券会社選びが重要となってくるんですね。
制度信用取引 | 一般信用取引 | |
返済期限 | 最長6か月 | 証券会社が自由に決められる (ほぼ無期限) |
取引銘柄 | 証券取引所が厳選した銘柄 | 各証券会社が選んだ銘柄(ほぼ全ての銘柄) |
手数料や金利 | 安い | 高い |
逆日歩 | あり | なし |
信用取引のメリット
1,レバレッジがかけられる
3.3倍までの取引ができるので大きな利益が見込めます。
2,空売りができる
最初から売り(空売り)で入ることができます。株ラボがご紹介しているバフェットロング・ショートシステムは買いと売りの両方を使って両建てを行いますので、空売りのできる信用取引は必須ですよ。
3,短期ならば安く株を購入できる
短期の取引ならば金利もそこまでかからず、売買手数料に関しては現物取引と違って無料の証券会社が多いです。
4,同じ銘柄を1日に何度も購入できる
現物取引では同じ資金内で同じ銘柄を一日に何度も取引することはできませんが、信用取引でしたら可能です。短い時間で取引を何度も回転させるスキャルピングの様な手法を行うのでしたら信用取引が必須です。
5,配当落調整金がもらえる
現物取引と同様に信用取引の買いでは配当金に相当する配当落調整金というものがもらえます。ただし「空売り」をしていた場合は配当落調整金を支払う立場になります。
信用取引のデメリット
1,リスクが増える
もともとの自己資金の3.3倍まで取引ができるので、利益も増えますが損失も増えます。
2,返済期限がある
2,制度信用取引を行う場合、株を6ヶ月の期限内に手放さなければいけません。
3,長く持つとコストがかかる
現物取引の場合は売買手数料だけかかりますが、信用取引の場合はさらに金利(年利2%前後)、空売りならばさらに貸株料(年利1%前後)+その他手数料がかかります。つまり長く持てば持つほどコストがかかります。
4,逆日歩(ぎゃくひぶ)が発生することがある
信用売りをする場合、市場参加者が一斉に同じ銘柄を売り出すと、逆日歩というコストが発生することがあります。
信用取引の配当や優待について
株取引のささやかな楽しみである優待や配当ですが、残念ながら信用取引の場合は証券会社から融資を受けて株を購入しており、株の所有者は証券会社となっています。
そのため残念ながら信用取引の場合は優待も配当金も受け取る権利はありません。
しかしそれでは株価に与える影響が大きいので、買い方は配当の代わりに配当金に相当する配当落調整金というものが証券会社からもらえます。
しかし買い方がもらえるということは、売り方はその逆で証券会社に配当落調整金の支払いをしなければいけません。
これは投資家が証券会社から株を借りて空売りをしていますが、証券会社が本来もらえるはずである配当金を受け取ることができないので、売り方がその分支払わなければいけないということです。
一般信用取引の在庫について
一般信用取引で空売りを行う場合ですが、実は証券会社が投資家に貸し出せる株の在庫数には限りがあります。
平時ですとそこまで問題にはならないのですが、優待クロスなどが盛んになる決算時期になると多くの投資家が優待狙いで一般信用取引の空売りを始めますのでこの時期に関しては一気に在庫がなくなってしまいます。
ちなみに制度信用取引の場合は、逆日歩がかかる恐れがあるので、優待クロスで利用する人は少ないので在庫の心配はないようです。