逆日歩とは?計算方法・上限・調べ方まで完全解説【制度信用の落とし穴】
・逆日歩は制度信用の売りで発生する追加コスト
・株不足になると売り方が“罰金的”に支払う仕組み
・金額は毎日変動し、上限もあるが読みにくい
・優待クロスやサヤ取りでは利益を一瞬で消す破壊力
・回避の基本は「一般信用」「長く持たない」「貸借倍率を確認」
結論:
逆日歩は“読めないコスト”。発生前提で戦略を組むことが安定運用の鍵です。
逆日歩とは?仕組みと発生メカニズム
こちらは1日4円の逆日歩がついたところです
逆日歩とは、信用取引の「制度信用」において、株を貸し出すための在庫が不足した際に発生する品貸料(しながしりょう)のことです。通常、信用買いをしている人は金利を支払いますが、逆日歩が発生した場合は、信用売り(空売り)をしている人がその費用を負担し、買い方に支払われる仕組みになっています。
制度信用取引で発生する理由
信用取引には「制度信用」と「一般信用」の2種類がありますが、逆日歩が発生するのは制度信用取引のみです。
制度信用では、証券会社が保有する株が足りなくなると、日本証券金融(日証金)という機関から株を調達します。この調達コストが逆日歩の正体です。
株不足が起こるとどうなるのか
市場で「売り」の注文が「買い」の注文を大きく上回ると、日証金でも株が足りなくなります。
日証金は、さらに外部の機関投資家などから株を借りてくる必要があり、その際に発生するレンタル料が「逆日歩」として、空売りをしている投資家全員に課せられます。
売り残 > 買い残(株不足の状態) → 逆日歩が発生する可能性がある
売り残 < 買い残(株余りの状態) → 逆日歩は発生しない
逆日歩はお知らせがこない
逆日歩ですが、ある程度予測はできるものの、翌日になるまで逆日歩がいくらになるかはわかりません。
ネット証券でも板情報のところに逆日歩についてのお知らせはほとんどの場合で表示されず、多くの場合『信用証金』などの画面を開いて自分で確認しなければいけません。
また、逆日歩がつくということは、すでにお金が取られた後のお話ですので「逆日歩が発表されたら逃げる」ということもできません。
2017年12月 3196ホットランド
ホットランドはたこ焼きのチェーン店「築地銀だこ」を運営している会社です。お食事券が優待で貰えるのですが、人気が出て逆日歩がついた事例です。
逆日歩(品貸料率)が135円(日数6日)もついてしまい、100株で1500円のお食事券だったのですが、それを手に入れるために13500円の高額逆日歩を支払う事となりました。
2017年6月 2702日本マクドナルドHD
こちらは大人気のマクドナルドです。優待クロス初心者がその知名度からついつい手を出してしまう銘柄ですが、結構上級者向けの銘柄です。
2017年の6月ですが3日で198円の逆日歩がついていますね。マクドナルドは100株でハンバーガーとドリンクとサイドメニューが無料で6回分注文できる優待券がもらえるのですが、その権利を19800円でお買い上げということですね・・・
2018年4月 2695くらコーポレーション
こちらは回転寿司でおなじみのくらコーポレーションです。この事例は4月下旬の連休の絡みで4日の逆日歩がついちゃいましたね。なので4月の優待クロスはちょっと注意が必要です。
100株で2500円相当のお食事券につられて制度信用で空売りをした人は、23200円のお支払いでございました。
約10倍・・・一皿1000円のお寿司になりましたね。
逆日歩の計算方法と上限ルール
逆日歩は「1株あたり◯円」という形で算出されます。取引金額ではなく、保有している株数と日数に応じてコストが積み上がるため、特に連休を挟む場合などは注意が必要です。
逆日歩の計算式
逆日歩の合計額は、以下の計算式で求められます。
逆日歩の合計 = 1株あたりの逆日歩 × 株数 × 品貸日数
ここで重要なのが「品貸日数(しながしにっすう)」です。これは土日祝日もカウントされるため、金曜日に空売りをして月曜日に決済する場合、3日分の逆日歩が発生します。
1日あたりの上限はいくら?
逆日歩には、株価に応じて「最高料率(上限)」が定められています。際限なく膨らむわけではありませんが、銘柄によっては非常に高額になるケースがあります。
| 株価帯 | 目安の最高料率(1株1日あたり) |
|---|---|
| ~500円 | 0.05~0.10円 |
| 501円~1,000円 | 0.10~0.20円 |
| 1,001円~2,000円 | 0.20~0.40円 |
| 2,001円以上 | 0.40円前後 |
※注意:上限は銘柄区分や市場・注意喚起によって変わるため、ここに示した数字はあくまで目安です。
正確な料率は必ず日証金の公表データで確認してください。
逆日歩はいつ決まるのか
逆日歩の金額は、取引した翌営業日の午前中に日本証券金融(日証金)から発表されます。つまり、空売りをする時点では「いくら発生するか正確には分からない」という不確定要素があるのです。
逆日歩が発生しやすい銘柄の特徴
すべての銘柄で逆日歩が発生するわけではありません。発生には明確な予兆やパターンがあるため、以下の特徴に当てはまる銘柄を取引する際は警戒が必要です。
貸借倍率が低い銘柄
貸借倍率(たいしゃくばいりつ)とは、「信用買い残 ÷ 信用売り残」で算出される指標です。この数値が1倍を大きく割り込んでいる(=売り残が買い残より多い)銘柄は、慢性的に株不足の状態にあり、逆日歩が発生しやすくなります。
貸借倍率が0.1倍や0.05倍など極端に低い
売り残が日々増え続けている
株主優待銘柄・クロス取引の集中
個人投資家に最も身近で、かつ最も危険なパターンがこれです。人気の高い株主優待がある銘柄では、権利付最終日に向けて「クロス取引(優待取り)」を狙った空売りが急増します。
特に、一般信用取引の在庫がなくなった後、無理に制度信用取引でクロス取引を行う投資家が集中すると、一気に株不足が深刻化し、高額な逆日歩が発生します。「優待の価値より逆日歩の方が高かった」という本末転倒な結果(逆日歩の被弾)は、このパターンでよく起こります。
材料株や急騰銘柄
不祥事や業績悪化などの悪材料が出て、多くの投資家が「これから下がる」と予想して空売りが殺到する銘柄も危険です。また、短期間で急騰した銘柄に対して「そろそろ暴落するだろう」と逆張りの空売りが入るケースも同様です。
こうした銘柄では、取引所から「注意喚起」や「貸借取引自己融資銘柄」などの指定が入り、逆日歩の上限が引き上げられることが多いため、損失が指数関数的に膨らむリスクがあります。
逆日歩の調べ方|日証金で確認する手順
手持ちの銘柄に逆日歩が付いているかどうかは、日本証券金融(日証金)の貸借取引情報一覧で毎日確認できます
参照:日本証券金融株式会社
日証金のトップページ上部にある検索窓に、確認したい銘柄名や証券コードを入力すると、以下のような詳細情報が表示されます。

引用:日証金 貸借取引情報
赤枠の見方
品貸料率:1株・1日あたりの逆日歩金額(例:0.05なら5銭)
品貸日数:その取引に対して逆日歩が発生する合計日数
最高料率:その日に設定されている逆日歩の上限額
逆日歩は必ず「公式」か「証券会社」の発表を確認
逆日歩の情報はさまざまな投資情報サイトで公開されていますが、参照元となるデータによって差異が出ることがあります。以下の画像は、同じ三井住友フィナンシャルグループの逆日歩データですが、サイトによって表記が分かれています。
参照:IR BANK
日経新聞は「東証」のデータを参照しているのに対し、IR BANKは「名証」のデータを引っ張っているため、このような違いが生じます。
どちらも有用なサイトですが、損益に直結する逆日歩の情報は、必ず主市場の公式サイト(日証金など)で最終確認するようにしましょう。
逆日歩がサヤ取りに与える影響
低リスクな投資手法として知られる「サヤ取り」や「株主優待クロス取引」ですが、逆日歩はその前提を根底から覆す破壊力を持っています。
リスク管理を怠ると、一瞬で「コツコツドカン」の損失を招くことになります。
利回りが崩れる具体例
例えば、3,000円相当のカタログギフトがもらえる銘柄でクロス取引を行ったとしましょう。手数料が500円なら、本来の利益は2,500円のはずです。しかし、ここで高額な逆日歩が発生すると、以下のような逆転現象が起こります。
| 項目 | 想定通りのケース | 逆日歩に被弾したケース |
|---|---|---|
| 株主優待の価値 | +3,000円 | +3,000円 |
| 売買手数料・諸経費 | -500円 | -500円 |
| 発生した逆日歩(3日分) | 0円 | -6,000円(1株20円×100株) |
| 最終損益 | +2,500円 | -3,500円(赤字) |
優待の価値を上回るコストを支払う「本末転倒」な結果を避けるためには、事前のシミュレーションが欠かせません。
逆日歩で負ける典型パターン
逆日歩で大きな打撃を受ける投資家には、共通の「負けパターン」が存在します。
「みんなが狙っている」超人気銘柄:参加者が多ければ多いほど株不足は加速します。
品貸日数の確認漏れ:土日や大型連休を挟む場合、逆日歩は「1日分」ではなく「3日分」「7日分」と累積します。連休前のクロスは特に危険です。
最高料率の無視:「どうせ数円だろう」という根拠のない楽観視です。注意喚起銘柄は1日で数千円(100株あたり)が飛ぶこともあります。
配当落ちとの複合リスク
権利付最終日に空売りを保有すると、逆日歩だけでなく配当落調整金の支払い義務も生じます。信用買い側が受け取る配当金相当分を、売り側が補填する仕組みです。
配当利回りが高い銘柄では、配当落ち後の株価下落を狙った空売りが増えるため、結果として逆日歩も高騰しやすく、二重のコスト負担で資金が大きく削られるリスクがあります。
逆日歩を回避・軽減する方法
逆日歩は制度信用取引における「不可避なコスト」だと思われがちですが、賢く立ち回ることでリスクを完全に排除したり、最小限に抑えたりすることが可能です。
一般信用取引の活用
逆日歩を回避する最も確実で効果的な方法は、一般信用取引を利用することです。
制度信用とは異なり、証券会社が自社で用意した株を貸し出す仕組みのため、日証金からの調達コストである逆日歩は一切発生しません。
メリット:逆日歩が0円。コスト計算が容易で、不意の赤字を防げる。
デメリット:証券会社ごとの在庫に限りがある。人気銘柄は争奪戦になりやすく、早めに確保する必要がある。
特に株主優待クロス取引を行う際は、まず一般信用取引の在庫をチェックするのが鉄則です。
建玉日数を短くする
逆日歩は「1日あたり◯円」という計算で、保有日数分だけ加算されます。そのため、空売りを保有する期間(建玉日数)を1日でも短くすることが直接的な軽減策になります。
特に注意すべきは、権利付最終日の翌日(権利落ち日)の現渡(げんわたし)を忘れないことです。1日決済が遅れるだけで、逆日歩が倍増する可能性があります。また、カレンダーを確認し、土日や連休をまたがないスケジュールで取引を完結させる工夫も有効です。
銘柄選定で避けるべき条件
リスクの高い銘柄を事前に「触らない」と決めることも立派な戦略です。以下の条件に当てはまる場合は、制度信用での空売りを控えるべきでしょう。
注意喚起・売買規制:最高料率が引き上げられているため、被弾時のダメージが致命傷になりかねません。
極端な株不足:貸借倍率が「0.1倍未満」などの銘柄は、すでに踏み上げ相場が始まっている可能性があります。
貸株注意喚起銘柄:日証金が「株が足りなくなりそうですよ」と事前にアナウンスしている銘柄です。
日証金のページで実際に逆日歩を予測する方法
冒頭にでてきた日証金のページから銘柄を選んだ後に「融資・貸株残高」というものを見ると逆日歩が発生する可能性があるかどうかの判断ができます。
ここには融資の残高と貸株の残高が表示されますが、逆日歩が発生する目安として、融資残高÷貸株残高が0.8や、0.5などと低くなると逆日歩発生の可能性が高まります。逆に2.0以上あれば安心して良いでしょう。
上の画像ですと、2/26日の融資残高÷貸株残高は0.065とかなり低いですが、この日は1株あたり1.5円の高額逆日歩が発生しています。
そしてこの融資残高÷貸株残高の推移も重要です。
例えば優待クロスをおこなう場合、権利付き最終日1週間前から権利落ち日あたりに向けて特に増減がなく横ばいで推移していたら逆日歩発生の可能性は低いですが、権利付き最終日1週間前から権利落ち日に向けて値が減少している場合は逆日歩発生の可能性が高いです。
また、もう少し簡単な判断材料として、上の「融資・貸株残高」表の「差引残高」が日を追うごとに増加している場合も将来的に逆日歩が発生する可能性があります。
以上は銘柄ごとにも変わるので一概には言えませんが、ある程度の逆日歩の予測はできるかと思います。
よくある質問(FAQ)
制度信用取引において、売り注文(空売り)が買い注文を上回り、株不足が生じた際に発生します。日証金が外部から株を調達するための費用が投資家に転嫁される仕組みです。
いいえ、一般信用取引では逆日歩は発生しません。証券会社が独自に保有している株を貸し出すため、日証金からの調達コストが発生しないからです。
取引を行った翌営業日の午前中に日本証券金融(日証金)から発表されます。そのため、空売りをする時点では正確な金額を知ることはできません。
はい、土日や祝日も品貸日数(しながしにっすう)に含まれます。例えば、金曜日に新規売りをして月曜日に返済した場合、土日を含めた3日分の逆日歩が発生します。
信用買いをしている投資家は、逆日歩を受け取ることができます。逆日歩は「売り方が支払い、買い方が受け取る」というルールになっているためです。
逆日歩の1日あたりの上限金額のことです。株価に応じて決まっていますが、注意喚起や売買制限が出されると、この上限が通常の4倍〜10倍に引き上げられることがあります。
日証金の公式サイトを確認するか、証券会社の取引ツールの「銘柄詳細」や「貸借情報」画面を見るのが最も確実です。
「一般信用取引」を利用することです。在庫に限りがあるというデメリットはありますが、逆日歩リスクをゼロにできるため、優待取りでは非常に有効な手段です。
まとめ:逆日歩リスクを理解すれば損失は防げる
逆日歩は、制度信用取引を利用する上で避けては通れないコストですが、その正体は「株不足を解消するためのレンタル料」です。仕組みを正しく理解し、事前に対策を講じることで、予期せぬ大きな損失を防ぐことができます。
最後に、逆日歩リスクを抑えるための重要なポイントを振り返りましょう。
- 制度信用取引のみで発生する:逆日歩が不安な場合は、一般信用取引を優先的に利用する。
- 貸借倍率と注意喚起をチェック:売り残が多い銘柄や、取引所からの警告が出ている銘柄には近づかない。
- 品貸日数の計算を忘れない:土日や祝日を挟むと、1日あたりの逆日歩が数倍に積み上がる。
- 株主優待クロスは計画的に:優待の価値と、発生しうる最大逆日歩(最高料率)を常に天秤にかける。
信用取引は、資金効率を高める便利なツールですが、逆日歩のような特有のルールが存在します。リスク管理を徹底し、安全な資産運用を心がけましょう。






